『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』:淡々と進んでいく物語だが、核となる部分にもう少し厚みが欲しい。。

アイヒマンs・ショー

「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」を観ました。

評価:★★

第二次世界大戦下、ナチス・ドイツの手で行われたユダヤ人の虐殺。この歴史的悲劇を主導した元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判を、テレビ放映しようと奔走した男たちを描いたドラマ。このときの映像素材は今日でも様々なドキュメンタリーにも使われ(映画では、「スペシャリスト~自覚なき殺戮者~」が有名)、劇映画の中でも2013年に公開された「ハンナ・アーレント」でも活用されていたことを覚えています。映像としてもエポックメイクな、このフィルムを撮影していった裏方にも熱い話があったというお話になっています。監督は、「アンコール!!」のポール・アンドリュー・ウィリアムズ。

まず、本作を観た第一印象はとにかく淡々としているということ。もちろん、アイヒマンを撮りたいという1つの意思に動かれていく人々によって物語が紡がれていくので当然なのですが、この映画の前に観た「スポットライト 世紀のスクープ」が同じ淡々とした印象でも、1つの大きな闇(教会による隠ぺいという事件の闇の部分)に挑んでいくというミステリー要素があり、そこに面白さが惹きつけられた感があるのですが、本作は1つのTVショーを作っていくというだけのお話に終始してしまっているように思え、どうも私の食いつきが悪かったです。無論、ホロコーストで行われた悲劇と、アイヒマンという独特な人物に対峙するという大きなテーマはあるのですが、それについては「ハンナ・アーレント」のほうが描きこみ方も何倍も上を行っているように思います。

しかし、現在でも語り継がれている、この歴史的な裁判劇を撮るという単純とも思える行為の中に、様々な困難があったということを知れたのはよかった。プロデューサー役を演じたマーティン・フリーマンはどこかで観た俳優だなーとずっと思っていましたが、あの「ホビット」シリーズのビルボ役を演じた方だったんですね。ビルボで演じた飄々としたキャラクター像が、どこまでも前向きに物事を見ていくプロデューサーのまなざしと上手く被っていて、よい配役だと感じました。

次回レビュー予定は、「孤独のススメ」です。

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