『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』:DCコミックスのヒーローものはいつもテーマが深淵+迫力あるアクションシーンに、心震える!

バットマンVSスーパーマン

「バットマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生」を観ました。

評価:★★★★☆

IMAX3Dの字幕版にて。

「アイアンマン」から始まるマーヴェル・コミックシリーズは「アベンジャーズ」シリーズとなり、いろいろなヒーローを終結させた一大パラダイムとなっていますが、野球でいえば巨人があれば、阪神がいるように、いつどこの世界でも対抗できるところがないと映画界は盛り上がらない(笑)。その対抗となって登場しようとしているのが、スーパーマン、バットマンの二大巨頭を生み出したDCコミックス(とはいっても、アメコミの世界はマーヴェルとDCコミックスしか実質ないんですが、、)。その新たなレジェンドシリーズの第一弾となるのが、本作「バットマン VS スーパーマン」となるのです。監督は、実質のシリーズ初作となる2013年の「マン・オブ・スティール」を手掛けたザック・スナイダー。

ヒーローであるはずのバットマン、そしてスーパーマンがなぜ戦わないといけないのか? この問いに答えるには、よく戦争映画の感想文とかで出しているテーマを持ち出さないといけません。人にとって、「正義」と「悪」というのは表裏一体でしかなく、一方側から見た主観に過ぎないということ。本作では、「マン・オブ・スティール」で地球で育ったスーパーマンがゾッド将軍との戦いの場面から、物語がスタートしていきます。特撮ヒーロー or 怪獣ものが多い日本でも議論になる事があるのですが、ヒーローものの戦いで生じてしまうビル破壊などの二次災害・三次災害での被害者にとって、いくら地球を救うスーパーマンの戦いはそれ自体は意義があることなのかもしれないけど、スーパーマンが「邪神」と評されてしまうように「悪」という存在にもなり得てしまう。ただ、ここでの正義論は、それこそ一方から観た主観に過ぎない話。地球の平和が守られたのだからいいんじゃないか、、という議論にならないのは、スーパーマン自身がゾッド将軍との戦いで独善的な戦いをしてしまった部分もあるから。スーパーマンはスーパーマンで誰にも頼まれてもいないのに、各所で起こることを自分なりに防いできた。彼自身は正義の味方と思っているけど、彼の思う正義も万人にとっての正義になりえない部分が出てきたときに、ヒーローとしての使命感というものに心を苛まれてくるのです。

一方、そうした絶対的正義の問題に悩む優等生のスーパーマンに対し、バットマンのほうはいつも自分に不都合なことが起こらない限りは動かない相対的正義の立場しか取らない。しかし、彼の前に現れるのはペンギンやジョーカーなどのように問答無用に破壊と殺戮を繰り返す絶対的な悪役しか登場しないので、仕方なしに行動を開始していくのです。でも、今回はスーパーマンとゾッド将軍との戦いの二次被害で、自分の部下や愛する仲間を失ってしまった。そこに彼の中でスーパーマンへの憎悪が膨らんでいく。こうした相対的な正義の立場をとるバットマンがより人間的なので、鍛え上げた肉体と科学技術とお金を使った武器は持っていても、スーパーマンのような超人的なパワーを持たない設定になっているのも興味深いところなのです。そうしたそれぞれの正義(ジャスティス)がぶつかることで、真の正義のあり方を問うという、マーヴェル・ヒーロー作品とは違った面白さを出していくのです。

「300 スリー・ハンドレッド」、「ウォッチメン」など過去にもグラフィックノベルの独特の味わいを、ダークなモノトーン調で描いてきたスナイダー監督の持ち味は、作品が「正義と悪」という二大対立項で展開していく、本作の色合いと絶妙に合っていると思います。ラストのバトルシーンも迫力満点、、、なのですが、あまりにこのアクションシーンに力点が入りすぎていて、前半に展開してきた正義論のテーマがすっとんでしまっているのが少々残念なところ。あと、DCコミックスの弱点は、本作に登場する2大ヒーロー以外のヒーローが非常に見劣りしてくることでしょうか。。本作でも有名なワンダーウーマンが出てきますが、正直誰?っていう感じでしたし。。とはいえ、新しいDCコミックスのレジェンドをどういう世界観で生み出していくか、期待できるオープニング作品になっていると思います。

次回レビュー予定は、「ビューティー・インサイド」です。

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