『僕だけがいない街』:原作ファンからは非難轟々だが、映画としてはそれほど悪くはない

僕だけがいない街

「僕だけがいない街」を観ました。

評価:★★★

「マンガ大賞」や「このマンガが凄い!」などの各種マンガランキングに2年連続でランクインした同名ミステリー漫画を、「ツナグ」の平川雄一朗監督が映画化した作品。何か悪い出来事が起こると、その時点から戻り、その悪い出来事が解決されるまでタイムリープに陥る青年・悟を主人公に、その青年が18年前に体験した幼児連続誘拐殺人事件に絡んだ事件に巻き込まれていくというファンタジック&ミステリー。僕は原作を途中まで読んでいたのですが、その経験からいうと割合と原作通りなのかなと思ったのですが、ネットを見ると、原作ファンから見るといろいろと非難轟々とした作品のようです(笑。でも、映画単体で見ると、そんなに悪い作品ではないかなという感じがします。

この作品の面白さは、タイムリープという繰り返し起こる同じ現象の中で、何を解決すれば次に進むのかというSFとミステリーの要素が混在していること。それに加え、「ツナグ」で死後の世界をファンタジックにつないだ平川監督の持ち味が加わると、作品全体にファンタジーやヒューマンドラマの要素もうまくブレンドされ、それぞれの要素が観ているこちらの心を小気味よく掴んでいくのです。それに作品全体のリズム感もいい。特に、前半部はコミックであらすじを大体知っていたこともあって、原作で感じていたイメージをうテンポよく映像として見せてくれたところがなかなかよかったと思います。

ただ、(ネタバレとなるので極力控えますが)過去の幼児連続誘拐殺人事件を追っていく終盤、犯人の影が明確になってくるところから、とたんに作品の描写が結構大味になってきたところが気になります。中盤の事件のキーポイントになる小学校5年のシーンで、加代を何とか救い出すまではいいのですが、加代以外の小学生が失踪していく事件の背景が分かり難いし、犯人として仕立てられる白鳥の描写も結構薄め。そして、悟自身がすごく大胆に犯人に近づきすぎていて、結構ツッコミどころ満載になってくるのです。原作のほうも後半は未読なので分かりませんが、多分、この小学5年生の悟が真犯人を追いつめていくところから、映画オリジナルのストーリーが始まっているのかなと思います。ラストの現代での犯人との対峙も、安いサスペンスドラマの終盤みたいでだいぶ迫力に欠けると思います。

でも、映画全体の満足感は僕は十分感じたし、悟の小5時代に登場する同級生を演じる子役たちの演技がいいので、お話には結構引き込まれると思います。原作ファンは違いにツッコミながら観るのもいいですし、単純に予告編を観て、面白そうと感じたなら、観て損はない作品に仕上がっています。

次回レビュー予定は、「リリーのすべて」です。

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