『52Hzのラブソング』:バレンタインの幸福な一日を巡る楽しいミュージカル劇。少しダサさをも入れることで、等身大のラブストーリーにうまく仕立てている!

52Hzのラブソング

「52Hzのラブソング」を観ました。

評価:★★★☆

バレンタインデー当日。商売としてはかき入れどきなものの、恋人のいない花屋のシャオシンは花の仕入れを終えるが、口うるさいオーナーと平凡な毎日がただ始まっていくだけだった。一方、パン職人のシャオアンは片思いのレイレイにこだわりのチョコレートを作るが、そのレイレイも気になる相手と長年の同居中も恋愛としてはなかなか進展していなかった。そんなシャオシンとシャオアンは配達中に接触事故を起こし、一緒に配達する羽目になるのだが。。全17曲のオリジナル曲が全編を彩るミュージカル作品。出演は人気バンド“宇宙人”のシャオユー、元・棉花糖のシャオチョウ。「海角7号 君想う、国境の南」のウェイ・ダーションが、台湾の人気ミュージシャンたちを出演者に起用したラブストーリー。

ラブロメ映画の名匠ゲイリー・マーシャル監督が、かつて同じようなバレンタインデーを舞台にした恋愛群像劇「バレンタイン・デー」を作りましたが、本作はあのような群像劇ではないものの、2組とカップルとその周辺に登場する準主役級のキャラクターたちも恋愛し、無論、背景には多くのカップルたちも登場させるという、作品全体にハッピー感に包まれる素敵な作品に仕上がっています。これに華を添えるのが、全編を彩る歌の数々。正直「ラ・ラ・ランド」のようなハリウッドミュージカルに比べると、役者の華だけではなく、音楽の声量的な部分も物足りなさを感じますが、日本のミュージカル作品にはない、素の幸福感というか、いい意味での手作り感があって、ハートにじっくり幸せな気持ちに浸されていくような映画です。やはりこういうじっくりとした積み上げ感が台湾映画っぽいなということを思わされます。

あと、よく台湾映画を観たときの感想文に書いてしまうのですが、やはり中国や韓国映画と違う、どこか日本映画につながる部分があるような身近さがあるんですよね。例えば、同じ恋愛映画でも香港映画なら、ポスターに映える美男美女を登場させ、大都会を背景に少し観ている側には手の届かない恋愛像を描いてしまうのに対し、本作はそこまでの美男美女は登場しないし(→失礼ですが、、笑)、音楽やファッション、立ち振る舞いも少しダサさをワザと入れることで身近感を出している。イケメンなキャラが惚けることで可愛さが引き立つし、無愛想なオジさんがふとカッコいい振る舞いを見せただけで胸がキュンとなってしまう。そうした切り返しの上手さが、至るところに散りばめられた秀作なのです。

これで台湾の音楽事情が分かれば、もっと楽しめたんでしょうがね。。

次回レビュー予定は、「永遠のジャンゴ」です。

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