『ラ・ラ・ランド』:アカデミー賞14部門ノミネートに輝いたミュージカル作品の王道。音楽やシーンとして美しい部分はあるが、全体的には凡庸な感じ。。

ラ・ラ・ランド

「ラ・ラ・ランド」を観ました。

評価:★★★☆

アメリカ・ロサンゼルス。ハリウッドを有する一大エンターテンメト都市である、この街に今日も多くの若者たちが夢をかなえるために集ってくる。女優を目指すミアも、そんな一人。彼女は映画スタジオのカフェで働きながら、いつしかそのカフェにやってくる大女優のようになれることを夢見て、今日もオーディションに挑んでいる。しかし、ここまで結果はなかなか出てこない。落ち込む彼女はふと入った場末のバーで、ピアノを弾いていたセバスチャンと出会う。惹かれ合う二人だが、セバスチャンが加入したバンドの人気が出るとともに二人の関係に暗雲が立ち込めるのだった。。「セッション」のデイミアン・チャゼル監督によるオリジナルミュージカル。

今年の第89回米アカデミー賞で最優秀主演女優賞をはじめ5部門を獲得したけど、最優秀作品賞については、アカデミー賞で史上初の発表読み違えで一度は受賞したが、実は逃してしまっていたという記憶に残る作品にもなってしまいました(受賞は、「ムーンライト」)。僕はミュージカルは比較的好きなジャンルなのですが、どうも好き嫌いが激しくて、本作についてもちょっと微妙な評価をしなくてはならないかなと思います。ミュージカルの素晴らしいところは、何といっても音楽と歌が劇進行と共になっていること。これによって、各キャラクターの心情やドラマで描いているテーマみたいなことが心にダイレクトに伝わってくるとともに、通常劇では無理くりな話の流れでも、ミュージカルだと一気に持ってしまえることがあるのです(例えば、反目しあっていた2人が3分歌いあうとラブラブになるなんてこともOK)。本作もオープニングから、楽しい音楽とともにミュージカルシーンとしては美しいところが随所に描かれていく。ただ、そこに観客の心が乗っているか、、、というと微妙なところなんですよね。。

これには主人公2人の姿に、あまり共感できないところが大きいんじゃないかと思います。お話としては典型的なアメリカン・ドリーム+男女2人の恋物語というところなんですが、夢に苦労しながらという描写はありながらも、例えば、それが生活に窮するまで苦しくて、それでも夢を追い続ける、、みたいな共感性を呼ぶようなところまでないんです。ミアはちょっとハイソなカフェで仕事できてるし、夢ある仲間と夜はパーティーに繰り出し、車はエコカーに乗っている、、対するセバスチャンも、音楽性を否定されるとバーを辞め、バンドが世間受けするようなところに流されるのに心折られながらも、ミリオンスターになっているところは否定しない、、、というくらいに、歌う歌詞と実生活とが乖離してしまっている。。まぁ、楽しめればそれでいいのかもしれないですが、ここまで贅沢な夢物語設定にはちょっと閉口してしまうのです。

それでも、僕はラスト10分のミュージカルシーンの美しさというか、愛おしさにはキュンとしてしまいます。これは実際に観て欲しいのですが、一瞬のときめきや恋していた頃の淡いような感情というのが、音楽とともに一気に昇華される、このシーンは過去のミュージカル名シーンにも加わるような出来だと思います。それに「セッション」から続き、チャゼル監督のジャズ愛みたいなところを感じるシーンも中盤にあり、それも前作のジャズバンドでの成長劇と同様、音楽に関する強いこだわりも感じます。音楽やミュージカルシーンという部分だけを切り取れば、高評価できる作品ではありますが、物語も含めた全体で観ると少し凡庸感を感じてしまうかなと思います。

次回レビュー予定は、「マリアンヌ」です。

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