『CINEMA FIGHTERS』:EXILE TRIBEの楽曲にインスパイアされた6つのオムニバス作品。短編映画の難しさも感じるが、もう少し良質な作品作りをして欲しい。。

CINEMA FIGHTERS

「CINEMA FIGHTERS」を観ました。

評価:★

EXILEが所属するLDH JAPANと別所哲也が代表を務めるショートショートフィルムフェスティバル&アジア、作詞家・小竹正人のコラボから生まれたオムニバス映画。15年ぶりに母校を訪れた徹は、懐かしさに誘われて天体観察室に向かう。そこで見つけたノートには、想いを寄せていたダンス部の真矢からのメッセージが綴られていた(「パラレルワールド」)。人同士のコミュニケーションが希薄になった近未来の東京。“心の整体キモチラボ”は、人間の奥底に眠る感情を呼び起こして解放するメンタル・クリニックだ(「キモチラボの解法」)。今からそう遠くない未来。妻の深雪と永遠の愛を誓い合った20代のロクは、不治の病に侵されていた。ロクは特効薬が完成するまで永い眠りにつくことになった(「Snowman」)。多くの命が失われた大震災の悲しみによって、人々が色を受け付けなくなった世界。街は色彩を失い、あらゆるものが黒一色に統一されていた(「色のない洋服店」)。東京のホテルで働く俊介は、ある日出会った加奈子に恋をする。それから半年。遠距離恋愛を続ける俊介は、加奈子へのプロポーズを決意。だが、携帯電話から送ったメッセージの返信が途絶え、俊介の元には知らない男から不穏な電話が入る(「終着の場所」)。隕石の衝突から1週間。地球の表面温度はマイナス20度まで冷え込み、世界には雪が降り積もっていた。ストリートミュージシャンのアサヒは、天真爛漫な少女ウミに出会うが(「SWAN SONG」)。EXILE TRIBEの楽曲にインスパイアされた物語を、河瀬直美ら6人が映像化した作品。

昨年(2017年)に、THE BLUE HEARTSの歌に着想を得て、6つのオムニバス作品を綴った「ブルーハーツが聴こえる」という作品を見させていただきましたが、本作は、そのEXILE TRIBE版というところでしょうか。短編オムニバス作品というジャンルは嫌いなわけではないのですが、1つ1つの尺が短い分だけ、その短い時間にどれだけ観客の目を惹きつけるか。それが難しければ、複数の作品をつなげた1つのテーマを持った作品として、如何にメッセージングをしていくのかというところなんですが、THE BLUE HEARTSはともかく、EXILE TRIBEの曲となると更に思い入れがそんなにない分だけ、少し苦しい鑑賞になってしまいました。

もちろん、複数作品があるので、全然盛り上がらなかったかというと、実はそうでもないのです。今回の作品中では一番著名度が高い、河瀨直美監督の「パラレルワールド」は彼女らしい印象的な映像をつなぎ合わせる独特の感覚はいいなと思わせるし、「色のない洋服店」のテーマや色彩感覚もなかなか良かったです。個人的に一番好きなのは、SF劇になっている「Snowman」。治療のために冷凍睡眠についた恋する2人が、時間という不可逆なものに引き裂かれてしまう刹那的なお話は、心にすっと入ってくる作品でした。でも、この3作品も傑出しているかといわれると微妙だし、残りの作品のどうでもいいところ(例えば、最終作の「SWAN SONG」は、「デイ・アフター・トゥモロー」的な氷河期描写は目を見張るも、登場人物たちの服装がどこかの洋服屋から借りてきたみたいで全然サバイブ感が微塵もしないとか、、)ばかりが目についてしまい、少し心を動かすというにはほど遠いデキだったかなと思います。

とはいえ、ショートフィルムは若手の登竜門的なところもあり、スピルバーグなどのハリウッドの有名監督も、こうした分野を通ってキャリアを積み重ねてきたのも事実なのです。だからこそ、拡大公開にかけるのならば、手を抜かない良質なラインナップで魅せて欲しいなと(厳しいながら)思ってしまうのです。

次回レビュー予定は、「ロング、ロングバケーション」です。

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