『ブルーハーツが聴こえる』:あの伝説のバンドの曲から発想された6つの物語。音楽以外に、もう1つの映画をつなぎとめる何かが欲しい作品。。

ブルーハーツが聴こえる

「ブルーハーツが聴こえる」を観ました。

評価:★★

1995年に解散した伝説のバンド、THE BLUE HEARTSの結成30周年を記念して製作されたオムニバスドラマ。アンティークショップに勤める女性が、同棲して3年になる彼氏が浮気している現場を目撃してしまう(「ハンマー(48億のブルース)」)。遥か未来の銀河の果てにある宇宙刑務所に小惑星が接近する(「人にやさしく」)。ある脚本家が高校時代の思い出を本にしている最中に、その過去にタイムスリップしてしまう(「ラブレター」)。1987年、鍵っ子の少年は自分の誕生日に大好きな母と喧嘩してしまう(「少年の詩」)。ある男は最愛の女性を亡くし、その亡骸をいつまでもそばに置くべく暴挙に出る(「ジョウネツノバラ」)。元福島原発の職員である男は、家族の絆になっていた飼い犬の行方を探しに元同僚とともに福島へと向かうのだった(「1001のバイオリン」)。。「怒り」の李相日や「大人ドロップ」の飯塚健、「キネマ純情」の井口昇ら6人の監督が、それぞれ思い入れのあるTHE BLUE HEARTSの楽曲を自由な解釈で映像化。

伝説のバンド、THE BLUE HEARTSが解散したのが1995年。結成してから10年を駆け抜けたバンドでもありますが、「TRAIN−TRAIN」や「情熱の薔薇」など分かりやすい歌詞・音楽で、あのくらい熱いパッションを生み出すのは過去にも、今にもない唯一無二の存在でもあるかなと思います。ちょうど彼らが活躍していた頃というのが、僕が小学生から中学生という年代でしたが、当時それほどというか、全く音楽に関心がなかった僕でも、「リンダ、リンダ、リンダ」などの音楽は染み付いていて、今でもCM等々でそのサウンドを聞くと小学生くらいの思い出が蘇る。それほど、彼らの曲というのは人生にも染み付いているサウンドといっても過言ではないと思います。

本作はそんなTHE BLUE HEARTSの曲を自由に使い、その曲から発想される物語を紡いだオムニバス作品。ただ、音楽ファンとしてのTHE BLUE HEARTSの曲をそれほど知らない僕にとっては(失礼ながら)初めて聞く曲も多く、ファンの人ほどには作品に入れ込めなかったというのが正直なところ。いや、それ以前に映画作品としても、同じバンドの曲を使っているという共通要素でつなぎとめているものの、それ以外に1つの作品としてのまとまりを感じる要素が少し希薄だなと思います。せめて曲以外にドラマでも何かそれぞれのドラマにクロスオーバーさせるような要素を盛り込むと、単純なオムニバス以外にピリリと効いてくる効果があったというもの。どこかにあったのかもしれないですが、少なくとも鑑賞している間に感じられないのは痛いところです。

なので、それぞれの集まったエピソードについても監督や役者の力量で、作品自体にも力の差が感じられてしまうのは致し方ないところ。一番観るものを惹きつけるのは、李相日の「1001のバイオリン」でしょうが、僕が個人的に好きなのは、自分の子ども時代が再現されていた「少年の詩」でしょうか。ちょうど主人公の少年も同じような世代だし、ブラウン管にボワッと映る当時のテレビや懐かしのテレビCM、デパートのヒーローショーも行ったよなーーと感慨深い作品になっていました。それにTHE BLUE HEARTSの歌が、やはり思い出のツボをジンジンと刺激してくれるのです。

次回レビュー予定は、「トレインスポッティング2」です。

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