『トランスフォーマー 最後の騎士王』:マイケル・ベイの物量アクションに小気味いい物語進行に爽快感すら感じる。エンタテイメントながら、次世代の戦争をも考えさせる痛快作!

トランスフォーマー 最後の騎士王

「トランスフォーマー 最後の騎士王」を観ました。

評価:★★★★☆

IMAX3Dの字幕版にて。

香港での死闘の後、宇宙へと去ったオプティマス・プライム。地球に残ったオートボットはバンブルビーがリーダーとなり、オプティマスを救った発明家ケイドとともに低抗戦を続けていたが、人類とトランスフォーマーの全面戦争が避けられなくなってきていた。そんな中、ある英国人紳士と、オックスフォード大の女教授がケイドに接触を図ってきた。それは数千年間、秘密にされてきたトランスフォーマーが地球を救う鍵に、そして同時に人類絶滅の鍵ともなっていることを告げに来たのだ。そして、遠い宇宙をさ迷ってきたオプティマスが、彼らの生まれ故郷・惑星サイバトロンにたどり着くが、逆に地球を危機へと陥れるべく急接近してくるのだった。。日本の玩具発のSFシリーズ第5作目。1000年に及ぶトランスフォーマーと人類の歴史が明かされるシリーズ最終章第一弾。監督は、シリーズ全作を手掛けるマイケル・ベイ。

本シリーズ1作目が2007年に公開になって、もうすでにシリーズ5作目。「ダークサイド・ムーン」まではシャイア・ラブーフ主演でしたが、前作の「ロスト・エイジ」からはマーク・ウォルバーグ主演に交代。最初は、人類の味方のオートボットと彼らを狙う悪のディセプティコンの対立軸で物語が進む形でしたが、いろんな敵が現れるうちに人類も「トランスフォーマー=悪」という形になり、オートボットは人類の味方からどちらかというと地球の味方というか、人類を攻撃しないトランスフォーマーの味方という感じに前作くらいから変わってきています。バットマンなどのDCコミックにこの辺の味わいは似ているんですよね。惑星サイバトロンが本作には出てきますが、これも長い戦争によって崩壊寸前という状態。地球に移住するしかないトランスフォーマーたちにとって、地球にいる人類たちと共存していくのか、それとも排除していくのか、、何かヨーロッパの難民問題というか、今の世界の世情というのも物語として反映されているかなと思います。

という意味深な勘ぐりはいらないでしょう(笑)。僕はマイケル・ベイにとって本作は当たりのシリーズだと思います。変にリアルな素材を扱って、空気がない宇宙でシャトルの大爆発シーンを作ったり(「アルマゲドン」)、昼日中に戦国時代のような御前会議を演出したり(「パール・ハーバー」)するヘンテコな作品を作るよりは、トランスフォーマーという玩具の素材を借りて、全くオリジナルなフィクションを大団円で描いていくほうが、ベイにはあっているのです。本作でも彼らしい物量アクションは見応えがあるの一言。恐竜型トランスフォーマーであるダイノボットの描写に前作は興奮しましたが、人工のトランスフォーマーにまつわる陰謀が物語のリズム感を悪くしていた分、本作はストレートなアクションに、孤児たちの話やイギリスのアーサー王伝説を小気味よく配置していく様が見事。アンソニー・ホプキンスも楽しんで演技しているのが見てても楽しいです。

それとあと1つ、本作のアクションはエンタテイメントではあるのですが、次世代の戦争の形をも描いていると思うのです。それは隠れていたケイドたちがTRF(対トランスフォーマー戦闘部隊)に追われるシーン。ドローンのカメラに顔認識されながら、そのドローン一団に搭載されている機関銃で自動的に追われていくというシーン。僕らは戦争というと、どうしても第2次世界大戦に囚われてしまうのですが、アフガニスタンやイラク戦争のときには既にドローンによる遠隔操作やミサイルの自動ポインティングによる集中攻撃が行われ、もう人(戦闘員)という物量を投入していく戦争は一世代前の戦争ともいえるかなと思います。無論、テロや北朝鮮などのミサイル・原爆問題はありますが、こうした次の形の戦争を考えていくには、(映画といえども)戦争の形を常にイメージしていくことも大事なのかとも思いました。

次回レビュー予定は、「関ヶ原」です。

コメントを残す