『ケアニン あなたでよかった』:テーマがテーマだけに涙腺は緩むが、同時に介護についても色々考えさせられる作品!

ケアニン あなたでよかった

「ケアニン あなたでよかった」を観ました。

評価:★★★☆

高校卒業後、介護の専門学校に通い、何となく介護福祉士になった大森圭。未だに高齢者たちと上手くコミュニケーションが取れない日々が続くなか、卒業後に彼が進路に選んだのは小規模な多機能介護施設だった。そこで彼は認知症を発症した79歳の星川敬子の担当を任される。試行錯誤を繰り返しながらも、先輩介護士の協力もあり、徐々に敬子との距離を縮めていくのだった。。介護をテーマに「コスメティックウォーズ」の鈴木浩介監督が撮り上げたヒューマンドラマ。

僕がまだ小さい頃や学生時代の頃は、核家族化というのが社会の大きなテーマに取り上げられていて、高齢化社会というもう一つの大きな課題は来るべき社会のテーマのように思えていました。しかし、僕の親のような団塊の世代が高齢者になってきて、日本は世界を代表する高齢化社会に突入したといってもいいでしょう。一昔前に叫ばれていたような介護老人施設の不足という問題もあるでしょうが、国の介護政策やマーケット的にも有料の様々な施設ができており、施設の数というよりは人材の不足という問題がより顕著になっているように思えます。それに高齢者も自主的な運動や健康プログラムを適用している人も多く、僕らが小さな頃の老人(お年寄り)というイメージと今の高齢者はだいぶ違うようにも感じます。しかし、心身ともに70〜80代に入ってくれば衰えが生じてくるのも事実。そうした高齢者をどのように支えていくのかというのも、本作のような映画を通じて考えるというのもいい機会かと思います。

本作では2つの視点があると思います。1つは年老いると同時に、認知症を抱えた敬子を中心とした家族たちの被介護者の立場、そしてもう1つは、その被介護者に寄り添ってケアをしていく介護人としての立場。映画の中でも描かれますが、世にある様々なサービスの中で、医療・介護という分野は、直接人の手で人に触れていくというだけにとてもパーソナルなサービス分野ともいえると思います。それは単純に身の回りの世話をしていくという、動かなくなっていく人の身体を支えていくという補助的な部分だけでなく、人の生活の中で、その人の生き方に如何に寄り添うかという部分。これはある医療の本から読んだことでもあるのですが、どうしても大規模な病院や介護施設では、効率性を重んじて、少ない労力で効率的なサービスを展開していくのかを考える。でも、私たちの普段の生き方を見れば、たとえば睡眠時間を見ても、朝型もいれば、夜型の人もいる。心地よい生き方であれば、その全ての人にも合わせるような生活リズムを提供できることではないか、、それが医療や介護の分野で必要な”生き方”をサービスで提供することではないかと思うのです。

映画の中では、敬子が認知症を患っているということが、より敬子の生活世界の中に圭が触れていくのかというのも1つの見どころとなっています。テーマがテーマだけに涙腺が緩むことが必死ではありますが、劇映画としては少し描写が緩むところがあるのが少々残念かとも思います。ここのところを詰めれば、一昨年前に見た「鏡の中の笑顔たち」に次ぐ秀作になったかなとも感じます。

次回レビュー予定は、「パトリオット・デイ」です。

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