『海辺のリア』:俳優・仲代達矢の偉大さは十二分に感じられる作品ではあるが、、もう少し作品の構成を複雑にしてもよかったんじゃないだろうか。。

海辺のリア

「海辺のリア」を観ました。

評価:★★☆

認知症の疑いがかかった往年のスター桑畑兆吉は家族に騙され、老人ホームに入居してしまう。しかし、職員の盗んで、まんまと脱走し、海辺をさすらううちに妻以外の女に産ませた娘と再会し、彼の胸に人生最後の輝きが宿っていく。。盟友となる小林政広監督と仲代達矢が「春との旅」「日本の悲劇」に続き三度組んだ人間ドラマ。

80歳を超えてなお、Twitterを始めたり、プロ野球の始球式を行ったりと精力的なところを見せている俳優・仲代達矢。80歳を超えてなお30作近くの作品に出たいという記事を読んだことがありますが、本作を見てもなお現役というか、役者としての凄さを感じる作品となっています。本作は予告編を見ると分かる通り、主演の仲代達矢を始め、黒木華、阿部寛、原田美枝子と小林薫という5人の役者しか登場せず、それもほぼ海辺で展開するという舞台劇のような構成の作品になっています。舞台や背景が魅せるということがないので、それこそ役者の台詞だけで演じているキャラクターの内省をも表現し切るという、役者表現のみで構成するという異色作になっています。

ただ、どうでしょう、、役者としての凄さは感じますし、舞台劇として長きのキャリアを構築してきた彼の信念というのも感じえますが、映画というのは背景である空間であったり、様々な演出効果や音楽、カメラワークなどのピースをはめて、作品構成されるものだと考えています。無論、密室劇というものやモノローグ調で進む作品というのも映画ではあるのですが、例えば、ヒッチコックの作品を見ても、狭い空間を広く見せたり、デフォルメした映像表現で背景が変わらなくとも主人公の想いを表現できることを思うと、やや単調な作品構成に、仲代達矢という俳優のボリュームが収まりきれないように思うのです。牛丼屋の器に、一流シェフのフレンチが盛られたら、何だかもったないように思うじゃないですか、、この作品の印象はそんな感じなのです。

でも、波の音を感じながらの、仲代達矢の演技はなかなかオツではあるのですけどね。野外上映とかで見ると、なかなか洒落た雰囲気が出る作品なのかもしれません。

次回レビュー予定は、「20センチュリー・ウーマン」です。

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