『20センチュリー・ウーマン』:マイク・ミルズ監督が仕掛ける”女っぽい映画”!女性の会話劇が見ものながらも、根底に男性目線も織り込む愛についての物語!

20センチュリー・ウーマン

「20センチュリー・ウーマン」を観ました。

評価:★★★★

1979年、カルフォルニア州南部サンタバーバラ。この地で1人で息子を育てるシングルマザーのドロシアにとっては1つの悩みがあった。それは思春期を迎える息子ジェイミーをどう教育し、大人の男に育てていくかということ。そこで、ルームシェアするパンクな写真家アビーと、ジェイミーの幼馴染で友達以上恋人未満のジュリーに協力を求め、彼の成長を後押ししていくのだが。。「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が自身の母親に着想を得て制作したドラマ。

”男っぽい映画”というと皆さんはどういう映画を想像するでしょうか?マッチョなアクション俳優がガチアクションに挑む「エクスペンダブルズ」のような作品? それとも英雄が生まれる「プライベート・ライアン」のような戦争映画? ちなみに僕のイメージはアル・パチーノの「グッド・フェローズ」やケビン・コスナーの「アンタッチャブルズ」のようなギャング映画が男っぽさを感じる作品だと思います。他方、じゃあ”女っぽい映画”といわれると、途端にレパートリーがあまり出てこないことがないでしょうか? 僕の思いつくのは、ブリトニー・スピアーズの「ノット・ア・ガール」のような(古いか、、)いわゆる学生もののガールズムービーしか思いつかないんですが、渋い”女っぽい映画”があってもいいんじゃないかなと思ってました。こういう話を持ち出したのも、本作がまさしく”女っぽい映画”じゃないかなと僕の中で感じたからなんです。

本作の主役であるドロレス演じるアネット・ベニングを中心に、若手のアビー演じるグレタ・アーニング、ジェイミー演じるエル・ファニングと、この3人の会話劇がとにかく見るものを圧倒します。圧倒といっても、高圧的に迫る感じではなく、女性同士がナチュラルに、しかもあけすけないことを言い合う様が、まさしく劇としていい要素として効いているのです。男性目線ながらいつも思うのは、女性同士の会話って、男性同士では理解できないような、実にエグい本音までを晒しながらも、真剣に聞いていないんじゃないかという距離感をいつも保って、会話を成立させているのが凄いなと思うのです。(女性の方には失礼なのかもしれないですが、)傍目から見て、こうした聞いているのかそうでないのか、会話の内容そのものよりも、この会話するということが重要じゃないかというのも感じます。本作では、そうした女性の会話劇が映画として重要な幹になっていると思います。

上手いなと思うのは、こうした”女”が前面に出た作品にありながら、実は影の主人公であるのはモノローグになっているドロシアの息子ジェイミーであるところです。題名も、劇のほとんども”女”でありながら、根底ではそうした”大人な女”を見つめ、その愛によって育まれた”男”の目線であるのです。「人生はビギナーズ」で性の差も乗り越えた根底の愛を見つめる目線は本作でも生きている。ノンビリとした空気の作風は好き嫌いが分かれるかもしれないですが、僕はちょっと虜になっています(笑)。

次回レビュー予定は、「怪物はささやく」です。

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