『僕とカミンスキーの旅』:後半のロードムービーはなかなか魅せるが、そこに行き着くまでのテンポの悪さが少し致命的だと思う。。

僕とカミンスキーの旅

「僕とカミンスキーの旅」を観ました。

評価:★★

無名の美術評論家ゼバスティアン。彼は金と名声を得ようと、かつて脚光を浴びた盲目の画家カミンスキーに着目し、彼の伝記を書こうとする。マティスの最後の弟子でピカソの友人でもあったカミンスキーは、ポップアートが脚光を浴びた1960年代に盲目のアーティストとして注目されるが、今ではスイスの山奥でひっそりと暮らしていた。カミンスキーの隠された新事実を暴こうと、半ば強引に旅に連れ出し珍道中を繰り広げるうちに、不思議な友情を育んでいく。。「グッバイ、レーニン!」のヴォルフガング・ベッカー監督&ダニエル・ブリュール主演コンビが再び組んだロードムービー。

今ではハリウッドをはじめ、主にヨーロッパの映画でもいろんな作品に出演しているダニエル・ブリュール。彼が世に出た出世作といえば、2003年に本作のベッカー監督と組んだ「グッバイ、レーニン!」が挙げられるでしょう。昏睡状態に陥っていた母親想いの青年が、ドイツ崩壊後に奇跡的に目覚めた母親のために、崩壊前の世界が続いているように装いながら生活しようとするというこの作品は、映画の中に1つの失われた世界(虚像)を必死に形作ろうとする主人公の必死さに笑え、かつ彼が再び発作を起こせば死に至るという母親のために実直に動いていくという姿にも心温まるという、多面性を魅せた大変素晴らしい作品でした。このコンビが再びタッグを組んだとき、どのような作品がまた生まれてくるかが楽しみな鑑賞でした。

基本的に本作の目玉となるのは、年老いたカミンスキーと彼の思い出をめぐりながら、彼の隠された一面を暴くことで一攫千金を狙おうとする主人公のロードムービーの部分。当初は下心ありありなセバスティアンが、その旅の道程で、時に奇抜な行動を取りながら、時に若きときの想いに思いを巡らす1人の老人に心開いていくというのは、ありふれた話ながらも主演2人の好演も手伝って見応えあるドラマに仕立てられていると思います。ただ、「グッバイ、レーニン!」の若き日のブリュールと違って、モッサく、かつダメダメオッサンになっているセバスティアンというキャラクター像が、僕はちょっと好きになれなかった。。いや、ブリュールが少し清楚すぎて、セバスティアンという役どころを演じるには少々力量不足な面があるのかなとも思えます。前半の細々とした、大人の事情的なドラマもイマイチ笑えないというのもテンポを悪くしている要因かなとも感じます。

次回レビュー予定は、「ちょっと今から仕事やめてくる」です。

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