『パッセンジャー』:宇宙に取り残された男女を巡るSFロマン。テーマも描写も面白いが、物語の進め方がやや安直か。。

パッセンジャー

「パッセンジャー」を観ました。

評価:★★★

3Dの字幕版にて。

時代は地球が住みにくくなり、壮大な人類宇宙移住プログラムが始まったとき。乗客5000人を乗せた宇宙船が新たな居住地を目指し地球を出発する。到着までかかる宇宙航行時間は、地球時間で120年。乗員・乗客は冬眠装置で眠り、宇宙船は自動航行で進んでいた。しかし、航行中の度重なる想定外な小さなトラブルが積み重なり、乗客の1人であるエンジニアのジムが90年も早く目覚めてしまう。戸惑いと宇宙船の中で生涯を終えなければいけないという、永遠の孤独に苛まれたジムだったが、ある日、同じく目覚めた作家のオーロラと出会うのだったが。。監督は「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のモルテン・ティルドゥム。

宇宙を舞台にしたSF劇というと、「スター・ウォーズ」とか、「スター・トレック」のようなアクション映画が多い昨今ですが、「2001年宇宙の旅」であったり、「ソラリス」であったりするような壮大な人間ロマンと、広大な宇宙との対峙させるような作品が僕は結構好きだったりします。本作は、そういう意味でも久しぶりとも思える、アクション映画ではない宇宙SF劇。上記の2作品のような高尚な作品ではないものの、新しい人生を夢見て飛び出した宇宙に、深淵とも思える長い人生時間を捧げなくてはならなくなった人の孤独さというのに焦点が当たっています。どこかのCMにSFサバイバルと本作を銘打ったものがあったかと思いますが、SFではないものの、ゼメキスの「キャスト・アウェイ」のように孤独にサバイブしなくてはならなくなったたぐいの作品とはちょっと違って、バーのロボットや、何でも加工して作れる食堂マシンのように、生きることには不自由しない分、より孤独に生涯を終えるというテーマにフォーカスできている作品になっていると思います。それに宇宙の広大さというのが、見事にミックスされていて、作品としてもとても奥行きが感じられます。

人はこうした何不自由しない環境で、孤独に生きれるのかという哲学的な問いに対し、本作は孤独ではなく、オーロラとの出会いによって道徳的な問いまでも観客に突きつけます。なぜ、道徳的なのかは物語の根幹の部分なので触れるのは避けますが、その結論の付け方がやや安易だったかなと僕は思います。予告編では何か起こりそう、、と思わせながらも、結局ハッピーエンドで終わるんでしょ、、という予定調和感があったのが、やはり物語として軽いテイストに終わってしまった感があるのです。途中で出てくるある乗員についても、もっと深掘りできそうなキャラクターだったのにあっさりと退場してしまうなど、表面では分からない底浅さを若干感じてしまうのです。宇宙の映像とともに、SFとしての面白さは十分に感じられるだけ少しその点が残念だったりしますね。

それにしても、本作は宇宙の中で、本当に1人で生きていけるかということにいろんなことを考えさせられます。見かけによらず、根っから引きこもりで、妄想好きで一人遊びな得意な自分にとっては、これほど充実した環境だったら1人のほうが気楽かなと思っちゃいますが、このテーマは一緒に見に行かれた方といろいろ議論できる作品だと思います。あと、情報科学的な視点で見ると、積み重なる小さなエラーはカスケード上にシステム全体をシャットダウンさせるまでに肥大するなど、科学的な裏付けというか、実証をしっかりと物語に織り込んでいるので、まさにそういうSF目線で観ても楽しい作品だと思います。

次回レビュー予定は、「キングコング 髑髏島の巨神」です。

コメントを残す