『彼らが本気で編むときは、』:生田斗真がトランスジェンダー役を好演するも、作品のテーマを奇異に映してしまうことが逆に残念な印象を受ける難しい作品。。

彼らが本気で編むときは、

「彼らが本気で編むときは、」を観ました。

評価:★★☆

11歳のトモは母親との二人暮らし。しかし、男にだらしない母親はトモの育児を放棄し、男を追って家を出てしまう。行き場に迷ったトモは困ったときに頼りにしている叔父マキオを訪ねる。いつもはマキオとともに母の帰りを待つトモだったが、そのときマキオはある人との同棲をしていた。それはトランスジェンダーのリンコ。母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコの存在に最初は戸惑いながらも、三人での奇妙な共同生活が始まっていく。。「めがね」の萩上直子監督が5年ぶりに撮り上げた人間ドラマ。

「かもめ食堂」や「めがね」など、ちょっとおかしな世界でマトモなことを描いていた萩上監督の5年ぶりの作品。まぁ、この萩上監督の姿勢を見ていれば、本作のようなアプローチをしてくるのは分からなくはないという感じの作品になっています。家庭の問題を抱えているトモが、いつも頼りにしていたマキオを頼ると、彼の家にいたのは女性の格好をしている男性のような存在の人。最初は奇妙な変人を見るような目をしてしまうトモだったが、女性よりも女性らしいリンコを素直に受け入れていくというお話。ただ、僕は、このトランスジェンダーであるリンコなり、彼女と同居をするようなマキオをおかしな世界感という小さな箱に閉じ込めてしまうのは、あまりにセンシティブというか、問題をタブー視しているように逆に感じてしまうのです。いわゆるLGBTの問題は社会がオープンになってきているとはいえ、扱うのは非常に難しいところではあるかなと思うのです。いい作品であるとは思うんですけどね。

例えば、本作に登場するリンコを普通の女性とした場合、お話としてはすごく面白みに欠ける作品になるのです。トモが頼ったマキオの家には同居し始めた女性がいて、その女性に母親意識が芽生えると、産みの母親との対立劇になっていく。すごくまともで、特に映画にする要素はない。やはり、本作はリンコをトランスジェンダーとして扱うことで、そのことにフォーカスさせてしまう作品になってしまうのです。だったら逆に、熱演している生田斗真には悪いのですが、リンコを役柄上はトランスジェンダーでも、役者としては普通の女性に演じさせたほうがよかった。そのほうが作品としてのズレの面白さというところが出て、より萩上監督らしさが出るかなと感じるのです。

主演である生田斗真には悪いのですが、彼が熱演を見せるほど、作品的にはより奇異に映ってしまったかなと思います。ただ、マキオを演じた桐谷健太はとても静かな演技で、作品をしっかり支えて好印象でした。

次回レビュー予定は、「ひるね姫 知らないワタシの世界」です。

コメントを残す