『疾風ロンド』:コメディ、推理、人情、スポーツ、、いろんな要素は用意しているが、全てが軽くて、底が浅い作品。。

疾風ロンド

「疾風ロンド」を観ました。

評価:★

大学の研究所でウイルス研究のために極秘開発した違法生物兵器K55。偶然の産物でできた生物兵器が、その開発者の手によって盗まれ、現金3億円を要求される。が、犯人が事故死。その犯人が違法生物兵器を隠した場所は、日本有数のスキー場。回収を託された冴えない研究員・栗林が、わずかな手がかりを頼りに生物兵器を探すうちに、予想外の出来事が次々に起こっていく。。東野圭吾の同名ベストセラー小説を映画化。監督はバラエティ番組『サラリーマンNEO』や連続テレビ小説『あまちゃん』を手がけた吉田照幸。

TVドラマでも、映画でも人気引っ張りだこになっている気鋭の小説家・東野圭吾原作の映画化作品。東野作品というと、エンターテイメント性もありながら、人間ドラマもたっぷりと魅せたり、かと思えば、学園モノだったり、パロディっぽいものを手がけたりと、非常に作品の幅が広い。けど、僕はやはりヒット作となった「秘密」や、「変身」、「手紙」、「白夜行」と人間のもつ哀しさと、SFとまではいかないものの、人生を優しく狂わせるような世界観が魅力であり、その他の単純な推理モノとかになると、少し底が浅いかなと思わざるを得ないこともあったりします。本作は原作は未読ですが、ちょっとその意味では物語の底の浅さが、映画にすると余計に目立ってしまったかなと思います。おまけに作風もコメディという形をとっているだけに、人間ドラマがどこまでも薄っぺらく見えてしまうのです。

この物語の中で、唯一の光明を見出そうと思うと、生物兵器が隠されたスキー場でレストランを営む一家に陰る暗い過去。そこに生物兵器の存在が絡むことで、何かテロでも起きそうな予感をも感じさせるのですが、そこも案外とあっさりとドラマが完結してしまうので、とことん深みが出ない。かといって、主演の阿部寛が東野作品の人気キャラクター、加賀恭一郎を演じた「麒麟の翼」のような軽妙な江戸っ子刑事のようなお話にもなり得ない。コメディ、人情、サスペンス、アドベンチャー等々、様々な素材こそあるものの、すべてが安物でできた味も深みもないチャンポンのような作品になっていると思います。正直、この作品はテレビドラマでもよかった。スキー場を舞台にしているので、スキーアクションを素材としたエクストリームスポーツ映画っぽくしている努力も、全て空転しているように思えてなりません。。

次回レビュー予定は、「ブレア・ウィッチ」です。

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