『モヒカン 故郷に帰る』:奇抜すぎるキャラクター像が、物語を空転させている要因だと感じる。。

モヒカン 故郷に帰る

「モヒカン 故郷に帰る」を観ました。

評価:★☆

「キツツキと雨」の沖田修一監督による、モヒカン頭でいつまでも叶わない夢を追いかけている青年が、父の大病で恋人とともに故郷に戻って起こる人情コメディ。モヒカン頭の奇抜な青年を松田龍平、頑固な父親役に柄本明、モヒカンの恋人役に前田敦子など、豪華なキャスト陣で展開されます。

本作の舞台になっているのが、瀬戸内の海がきれいな広島・戸鼻島。序盤、モヒカン頭の永吉が島に戻ってくる風景が、時間の流れがまるで止まったような長閑な風景なのが、まずほっこりとしてしまう。そこに繰り広げられるコメディも何とも長閑そのもの。「南極料理人」では南極、「キツツキと雨」では岐阜県東濃部など、人が少ない田舎(南極を田舎というのはどうかという感じですが笑)で、テンポが比較的スローな感じでクスッと笑える物語を展開しながら、人として重要な部分を人情劇として描いていくのが沖田流。本作でも、その流れは変わらないのですが、キャラクターの味付けが従来作とは違い、見た目が奇抜な上に、行動も素っ頓狂な人が多く、何か物語にスルッと入っていけないのが少々残念なところ。終盤の結婚式の場面も、あまりに過剰な行動をしてしまうとどうしてもコメディの枠を外れて、コントにしか見えなくなってくるのです。

しかしながら、沖田監督の持ち味である、普通に見えるけど奇抜な行動をするキャラクター像が、何ともいい味を出すのは本作でも活きてきます。僕がいいなと思ったのは、吹奏楽部で女性陣に圧倒されるトランぺッター男子。彼も自信が持てなく、オドオドするだけではなく、永吉の影響で行動も奇抜になってくるのが何ともいい。ツッコミどころが多くなってくるのも、笑いを思わず誘っちゃうんですよね。普通の人に見えているからこそ、行動とのギャップがドラマの中でいいアクセントになってくるのです。

ですが、全体的にキャラクター像が奇抜すぎることが、コメディとして物語と上手く絡んでこない要因だと感じます。沖田監督には、あくまで普通に見える人が生み出す笑いなり、人情を描き続けて欲しいなと思います。

次回レビュー予定は、「暗殺教室 卒業編」です。

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