『幸せをつかむ歌』:何もかも、俳優メリル・ストリープの凄さを実感できる作品!

幸せをつかむ歌

「幸せをつかむ歌」を観ました。

評価:★★★

アカデミー賞でもノミネートの常連で、今でも第一線を走り続けている名女優メリル・ストリープ。彼女が実娘のメイミー・ガマーと、親子役で共演したのが本作。メリルが演じるのは、今でも夢を追いかけロックミュージックの歌手としてステージに立ち続ける女性リッキー。しかし、実状は街のしがないライブハウスで歌うしかなく、当の昔に離婚をし、息子や娘たちとは離れて、きままな一人暮らしをしていた。ある日、別れた元旦那から娘の夫が浮気をし、そのまま捨てられたという連絡を受ける。過去に自殺未遂を起こした娘だけあって、リッキーはなけなしのお金をはたいて娘に会いに行くのだが。。本作のメガホンを取るのは、「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ。

メリルのすごいところは何にしても、とことん役柄に入り込んでしまうことでしょう。近作の「イントゥ・ザ・ウッズ」の魔女役でも、「8月の家族たち」の肺がんを患いながらも薬物依存を抜けられない女性も、特殊メイクでなんであろうが平気でするし、役柄に入り込むためのリサーチも、その役に必要な要素の鍛錬も必死にこなして身に着けてしまう。本作ではロックスターでしたが、「ミュージック・オブ・ハート」ではバイオリンを操る音楽教師でしたし、まさにロック歌手にも見えるし、音楽教師にもなり切ってしまう。それでありながら、役者メリル・ストリープのキャラクターとしての味わいも決して失うことはない。メリルが役者仲間からお化け的存在に思われてしまうのも、まさにそうした化けることにとことん長けているからだと思います。

その意味では、本作はまさにメリルがうってつけな作品。母親でもあるが、夢や生き方をも捨てることはできない。娘や息子たちには愛情はある一方で、自由な生き方しかしない母親との間には確執が生まれてしまっている。でも、こうした壁を乗り越えるのが、メリル演じるリッキーがとことん愛するロックミュージックなのです。映画作品としては予告編以上の驚きはありませんが、「マンマ・ミーア!」などのミュージカル作品で歌唱力も抜群なところを魅せているメリルが歌うロックはとにかく痺れる。音楽があれば、何もかも許されてしまうという展開はすごくありがちですが、人間ドラマとしてもじっくりとした作りこみをしているので、ラストの結婚式の無理くりさも自然と感動するドラマに仕上がってしまうのです。これもメリル・ストリープという大女優が魅せるマジックかもしれません。

実娘のメイミー・ガマーは海外TVドラマ「恋するインターン」で演技を見ていましたが、母親役でメリルと共演するとは。。まさにメリル尽くしな作品なので、彼女が好きな人は必見です。

次回レビュー予定は、「リップヴァンウィンクルの花嫁」です。

コメントを残す