『あなた、そこにいてくれますか』:願いを叶える不思議な薬で過去にタイムスリップする男。時のうつろいを見事に捉える韓国映画の良さは感じるが、甘めなラストにはやや閉口気味。。

あなた、そこにいてくれますか

「あなた、そこにいてくれますか」を観ました。

評価:★★★☆

カンボジアを訪れた医師のスヒョンは、手術で赤ん坊を救ったお礼として“願いを叶える薬”と呼ばれる不思議な薬を手に入れる。韓国に戻ったスヒョンは半信半疑で亡き恋人のヨナに会いたいと願い、薬を飲んだ彼は1985年にタイムスリップする。そこで出会ったのは、若い頃の自分。水族館で働くヨナに淡い想いを抱いていた当時のスヒョンは、タイムスリップしてきた2015年の自分からヨナが事故で死んでしまうことを告げられる。何とかヨナを救いたいと願う1985年のスヒョンだが、彼女を助ければ、2015年のスヒョンにとって最愛の娘が消えてしまうことに悩むのだった。。フランスの作家ギヨーム・ミュッソの小説「時空を超えて」を韓国で映画化した作品。監督は「キッチン 3人のレシピ」のホン・ジヨン。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようなタイムスリップものですが、過去を変えれば、未来である自分の周りの環境も変わってしまうというパラドックスのドグマに悩むという典型的な作品、、、ではあるものの、タイムマシンのような過去に行ったっきりになるのではなく、あくまでタイムスリップできるのは”願いを叶える薬”の効果が効いている間だけ。薬の効果が消えれば、再び2015年の現代に戻ってくる。薬があるのは、せいぜい十数粒という状況で最愛の人をいかに救い、かつ今いる娘も如何に守るのかというのが焦点になってきます。まぁ、典型モノといいながらも結構面白く見れたのは、まずタイムスリップしていることにどう気づくのか? 過去の自分と対峙して、未来の自分の存在を如何にして伝えるのか? そして、恋人がなくなることと、自分の未来をどう守っていくか?という核心の部分を、順序よく物語を進めていることでしょう。テンポもいいし、2015年の中年スヒョンを演じるキム・ユンソク、1985年のスヒョンを演じるピョン・ヨハンの演技の掛け合いも面白いし、その周りのキャラクターも憎めない人たちばかりなので、物語の意外性は希薄ながらも、楽しく見ることができます。それに韓国映画は、どの作品でもこうした時の移ろいのようなテーマだと、印象的な画作り(本作だとエンドクレジットも含め)がすごくいいんですよね。

本作を観てて思うのは、人生誰しも幸せや不幸の定義は違うものの、長い人生の中で訪れる幸せや悲しみ、愛などの総量というのは、それぞれ違う人生でも一緒なのかなと感じました。無論、幼くして病気や事故で短い人生を終えなければならない人もいるかもしれないですが、人生山あり谷ありというように、ずっと幸せなことも続かないし、逆にずっと不幸せということもない、若くして成功する人もいれば、定年過ぎてから人生花開く人もいる。スヒョンにとって、ヨナの死は不幸なことだったかもしれなかったですが、逆にそれがあったから、かわいい娘を授かったということもある。なので、中盤までは気持ちよく見れたのですが、終盤がややメロウな展開になってしまったのがいささか残念でもあります。

次回レビュー予定は、「マイティ・ソー バトルロイヤル」です。

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