『バリー・シール/アメリカをはめた男』:政府のエージェントながら裏稼業で巨万の富を得ていた男の奇想天外な物語!トム・クルーズが楽しげに演じているところが見てても心地よい!

バリー・シール

「バリー・シール/アメリカをはめた男」を観ました。

評価:★★★★

天才的な操縦技術を持ち、民間航空会社で働き、何不自由ない暮らしをしていたバリー・シール。彼はその腕を買われ、CIAからスカウトされ、エージェントとして偵察機パイロットとして力を貸すことになる。冷戦当時の危険な任務の一方で、中南米を仕切っていた麻薬王パブロ・エスコバルとも接触。エージェントの任務の傍ら、麻薬の運び屋をサイドビジネスとし、その方面でもメキメキと頭角を表していく。ホワイトハウスやCIAの命令に従いながら、麻薬ビジネスで数十億を荒稼ぎするバリー。だが、そんな彼の背後には恐るべき危険の手が迫ってくるのだった。。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のダグ・リーマン監督とトム・クルーズが再タッグを組んだクライム・アクション。

少子高齢化、低成長時代に突入している日本で、政府は”働き方改革”の名の下に民間企業に対して副業を認める方向での指針を出し始めた昨今。ほんの50年前に自らの腕と才能、そして時代背景をも味方につけて、ビジネスを成功に導いていった男、このバリー・シールという人物の物語を見ていると、自分の才能をどうやって社会に打ち出せば儲かるのかなという想いにさせられてしまいます(笑)。実話を元に描いている本作は、若干史実とは違う部分がある(民間航空会社を辞めざると得なかった理由や、CIAスカウトと麻薬ビジネスに手を染めた前後関係等)があるとはいうものの、政府の仕事をしながら、影では全くブラックな麻薬ビジネスで稼いでしまうというところには驚いてしまいますし、表(CIAやホワイトハウスの仕事)の仕事の都合で、裏の仕事(麻薬ビジネス)が正当化されてしまうようなところもあり、おいおいとなってしまうのも時代の趨勢をうまく乗り切った運のよさみたいなものを感じて、このバリー・シールという人物の只者ならぬ感はすごく伝わってきます。

映画とは違い、バリーは実際は悲しい末路を歩むことになってしまうのですが、映画作品としてのみ評価をしていくと、犯罪劇も痛快だし、スパイ劇としても政府の狙いの裏の裏をついていくような場面は痛快さを感じます。トム・クルーズも「ミッション・インポッシブル」のようなシリーズ作を除き、ここ数年は単体作品では目立つところがなかっただけに、彼自身も楽しんで演じているところが作品の爽やかさにつながっています。それに「ボーン・アイデンティティ」、「Mr&Ms.スミス」などのスパイ劇が上手いダグ・リーマンの1960年〜70年代をうまく表現する映像センスもなかなか。トム・クルーズ主演のハリウッド大作だろうと思って敬遠するには惜しい、小気味良い秀作になっていると思います。

次回レビュー予定は、再びの「ダンケルク」です。

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