『スプリット』:シャマランが仕掛ける本格的密室スリラー。最後の商業映画っぽくしてしまった演出が安っぽく見えてしまったのが残念。。

スプリット

「スプリット」を観ました。

評価:★★★☆

女子高生のケイシーは、同級生のクレアの誕生日パーティに招かれ、クレアの親友マルシアととも自宅へ送ってもらうところだった。しかし、車に乗り込んできたのは運転するはずだったクレアの父親ではなく、見知らぬ男。その男に拉致された3人はどこか分からない暗い地下室に監禁される。ケイシーたちを拉致した男は23もの人格を持ち、彼女たちの前に現れる度に違う人格が現れていた。なんとか脱出を試みようとするなか、男に最も危険な24人目の人格が姿を現す。「X-MEN」シリーズのジェームズ・マカヴォイ主演、「ヴィジット」のM・ナイト・シャマラン監督によるサスペンス・スリラー。

「シックス・センス」で世の中をあっと言わせた後は、鳴かず飛ばずというか、もはや玄人好みな映画しか作らなくなったM・ナイト・シャマランの新作。僕もずっと彼の作品が持つ不思議な世界感に惹かれ、たとえ凡作であろうともスクリーンでできるだけ観てきたのですが、本作に関してはシャマラン作品の中では比較的よくできた万人受けしやすい題材だったかと思います。それでいて、ヒッチコック映画のようなうまく空間を分けたスリラー劇としての構成も見事。特に、3人の女子高生が1部屋から複数の部屋に分かれて劇が展開していき、なおかつ外から精神分析医も入ってくるという多面的な構成はヒッチコックが愛するような演出方法だと感じます。

そして本作でのメインは何といっても23の人格を持つ、謎の男を演じるジェームズ・マカヴォイの気迫溢れる演技。この人は主役として花開くような演技を魅せた2008年の「ウォンテッド」や近作の「X−MEN」シリーズでもそうですが、主役級のキャラクターでありながら、どこか一筋縄ではいかない脇役感(というか変化球感)をずっと出している人ですが、本作では彼の持ち味が多重人格者という役どころにぴったりと合っているのです。確かに一人の俳優が演じているのではありますが、23人のキャラクタそれぞれは別々の役どころを演じているように感じる。これには脱帽なのです。

こうした良い要素が組み合わさったスリラー劇だったのですが、最後の最後で表出してくる24人目の人格が、僕にとってはいらない素材だったかなと思います。それをシャマランのある過去作品(それも日本ではあまりヒットしなかったやつ、、笑)と結びつけるから、すごく商業的な匂いがして、余計に安っぽく映ってしまった。これがなければ、もっと高評価できた作品だったと思うのですが。。

次回レビュー予定は、「人生タクシー」です。

コメントを残す