『ドクター・ストレンジ』:マーヴェル異色ヒーローを描く、クールで迫力ある映画。ただ、話がとっても分かり難いのがいかんせんともしがたい。。

ドクター・ストレンジ

「ドクター・ストレンジ」を観ました。

評価:★★★☆

3Dの通常字幕版にて。

天才外科医ストレンジ。彼の手にかかると、どんな治療困難な病変を抱えた患者でも手術での治療を可能にしていた。羨むような医療技術を持つ彼だったが、大きな自動車事故で人生は一変する。大怪我を負った彼にとって致命的になったのは、何回もの手術を施しても、震えが止まらず、思うように動かない両手。外科医としての生命を絶たれようとしていた彼は、両手の機能回復のため、ありとあらゆる治療を試すがうまくいかない。すがる気持ちでたどり着いたのは、どんな傷も治す不思議な力を操る指導者の元で修業を積むこと。しかし、それは彼の常識をも超えた世界との遭遇だった。そんな彼に、強大な敵との戦いが待ち受けているのだった。。マーベルのヒーローの中でも異色の魔術師をベネディクト・カンバーバッチが演じたアクション映画。監督は、「エミリー・ローズ」や「地球が静止する日」を手がけてきたスコット・デリクソン。

拡大を続けているマーヴェル・”アベンジャーズ”・シリーズ映画の新作。今回の主人公はマーヴェル・コミック・シリーズの中でも魔術を操る元医者という異色キャラクター、ドクター・ストレンジ。この作品、まず楽しいのは何といっても主人公ストレンジが操る魔術の数々。監督のスコット・デリクソンは「地球が静止する日」で魅せたように、VFXの使い方が非常に上手い監督さん。渋いヒーローであるストレンジの世界観に合うように、ちょっとダーク色がありながらも、暗めの色が映えるような見事なVFXを構成しています。特に、ストレンジや師であるエイシェント・ワンが切る魔法陣の美しいこと。魔法陣というと、どうしても僕は昔TVでやっていたアニメ「悪魔くん」を思い出してしまうのですが、それの何倍もカッコいいです(笑)。それにノーラン監督の「インセプション」ばりの現世界と異空間をつなぐ世界観の変容と、それで繰り広げられるアクションも見事な描写。これがまた3Dに映えるのです。”アベンジャーズ”シリーズは3Dでの公開があっても、やや3D効果が薄い作品が多いのですが、これは初ともいっていいくらい3D鑑賞必須な作品だと思います。

ただ、そうした世界観の見事な構築に対し、物語が酷く分かり難い。僕は字幕版で観たのですが、結局ストレンジの師匠であるワンが犯した禁忌の部分がどうしても理解することができなかった。ネタバレの部分かもしれないので、別の比喩で書くと、例えば、医者なんだけど別の患者の命を犠牲にしつつ、自分の患者の命を救いたい、、とか、そういうレベルのお話? それとも「鋼の錬金術師」の人体錬成のようなことをしていたってこと? この部分のモヤモヤがどうしても取れず、結局このことがキッカケでラストの仲間割れみたくなってしまうところにもつながるのかなと思うので、ややお話の進め方がスムーズじゃないなと思ってしまいます。この辺りは、日本語吹替え版で観たほうがすっきりとくるのかもしれません。

それと同じくらい残念なのは、敵であるカエシリウスの存在感が薄いこと。。冒頭からラストの香港でのバトルまで結構な数で登場するのですが、彼が身につけようとしていた永遠の命に執着する理由がくっきりと描かれないことがキャラが薄い印象を付けてしまったのかなと思います。ワンが教授し、ストレンジが身につけた魔術の世界観に対し、カエシリウスが固執したダーク・ディメンジョンの凄さというのもイマイチ伝わってこなかったのも(描写は凄いんですけどね)、このカエシリウスの存在の薄さに起因しているのかなと思います。ワン演じるティルダ・スウィントンが「ナルニア国物語」以来の印象あるキャラクターを演じたのに対し、「ローグ・ワン」で短い登場シーンでも印象に残ったカエシリウス役のマッツ・ミケルセンが残念キャラになってしまったところも好対象になってしまいました。

と、ダメな点も目につきますが、ここのところ素っ頓狂なくらいに明るい系のキャラが多かった”アベンジャーズ”シリーズ作品の中で、久々にダークで、クールで、カッコいい作品が出てきたなと思います。エンドクレジット後の映像は、このシリーズではお約束ですが、本作では間を置いて2シーン挿入されるので、本当に最後の最後まで見てくださいね。

次回レビュー予定は、「未来を花束にして」です。

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