『幸せのアリバイ Picture』:人生の岐路に立つ5つのお話をつなぐオムニバス作品。演じる役者の活き活きとした演技が楽しい作品!

幸福のアリバイ

「幸福のアリバイ Picture」を観ました。

評価:★★★

ヤクザの親分の葬式とは知らずに仕切りを行う葬儀屋と、部下や家族に無理な遺言を遺した親分。マンネリな付き合いをしていたカップルに突然降ってわいたお見合い話。成人式にスーツではなく特攻服で出席しようとする息子と、それを止めようと必死になる母親に、それを優しく見守る父親。できちゃった結婚で出産を控えた妻のもとに、妻の父親と一緒に向かう夫。ひとりの女性に対し、同級生のプロ野球選手に挑戦を挑む無謀な自称・役者のフリーター。様々な人々の人生の節目・勝負の一時を捉えたオムニバス映画。「スマイル 聖夜の奇跡」から9年ぶりの監督作となる陣内孝則と、「ディストラクション・ベイビーズ 」の脚本家・喜安浩平がタッグを組んだヒューマンコメディ。

”幸福のアリバイ”という意味深なタイトルだけど、5つの中短編で構成されたオムニバス映画を観ていると、各話で人生の岐路というか、勝負すべき節目のときを迎えた人間の悲喜こもごもを描いていて、とても楽しく見れました。思えば、人生における幸せなときというのは、それぞれの岐路において、自分がどういうプロセスで道を選択したかに依っています。真正面から勝負をすれば、結果として自分の想いとは違った結果となったとしても人生には納得できるだろうし、嫌だ嫌だと逃げ腰で挑めば、後々までその選択をしたことに後悔してしまう。それぞれの描かれるエピソードは違えど、楽しく見れるのは、それぞれの登場人物たちに嘘がないこと。リアリティがないといえばそうかもしれないけど、これだけ自分に真っ正直に生きることができれば、幸せは逃げずに向こうからやってくる。ゲラゲラと笑えるドラマを見ながら、ふとそんなことを感じました。

どのお話も好きなのですが、特にいいのが、中井貴一演じる父親と成人式に挑む息子との交流を描いたものでしょうか。とにかく中井貴一がカッコいい。こんなに渋い父親がいる家庭は楽しいだろうなと思います。同じ父親でも、義父を柳葉敏郎が演じた出産のエピソードも捨て難い。頼りないバンドマンの夫の浅利陽介とのコンビで繰り広げる車の中でのエピソードも可笑しくて笑える。葬式のエピソードは出だしということと、どうしても明るい展開に持っていくのが難しいのかノリませんでしたが、その直後のお見合いで、互いを憎めない凸凹カップルを演じた山崎樹範と木南晴夏の明るい感じで、だいぶ救われているように思います。同じカップルで、結婚式のエピソードも登場してきますが、今までは脇役を演じることが多かった山崎樹範が日の当たる役を全開で演じているのが実に楽しい。映画に登場する男役の中で、もっともイケなく、空気の読めない世の大部分の男子を、これほど的を得て描けているのも凄い。世にあふれるリアルな実態を、的確に表せているのは陣内監督の力量なのでしょうか(笑)。

コメディはやはり心に触れる笑いを提供して、ナンボのもの。オムニバスなので、作品全体で盛り上がっていく感にはどうしても乏しくなりますが、コメディ好きには是非チェックしてもらいたい良作です。

次回レビュー予定は、「劇場版 「暗殺教室」 365日の時間」です。

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