『世界一キライなあなたに』:生きることに真剣に向かい合った、1組の男女が繰り広げる傑作ラブ・ロマンス!

世界一キライなあなたに

「世界一キライなあなたに」を観ました。

評価:★★★★

26歳の女性ルーは、イギリスの田舎町で半ば自分の夢を諦め、仕事も転々と変えながら退屈な毎日をやり過ごしていた。そんなルーがカフェの閉店とともに、次なる仕事として選んだのは、車椅子生活を送る青年実業家ウィルの介護役兼話し相手。同じく人生に絶望しているウィルは、母親が雇ったルーを早く厄介払いしたいと怪訝な態度で接するが、ルーの前向きな姿勢に次第に心をひらいていく。。イギリス人作家ジョジョ・モイーズのベストセラー恋愛小説を、シーア・シェアイック監督が映画化した作品。

映画作品の中には、いわゆる難病ものというジャンルがあったりしますが、本作のそんなジャンルに振り分けされそうな形の作品。しかし、対象となるウィルは事故の脊髄損傷で、ほぼ全身麻痺という状態に陥ったのであり、進行性のいわゆる病気というものではないので、障害者もの、、、といってもよいかもしれません(ただ、神経麻痺により体温コントロールも困難という描写もあるので、一概には括れないのかもしれないですが)。ただ、ここでいう難病とか、障害者とかいうラベルは、本作では1つの味付けに過ぎず、物語の根底にはそれぞれ違った形で、人生の大きな壁にぶち当たっている1組の男女の物語が組み上がっているのです。本作の良さは、この男女の人生物語の組み立てのうえに、主人公2人のキャラクターの味付けの良さや、かつイギリス映画らしいスマートな演出もあいまって、とても軽妙で素敵なラブ・ロマンスになっていることなのです。

ただ、この映画で残念なのは、ウィルの持っている人生への絶望というのが最後の最後まで解消されないところでしょうか。ネタバレになるので詳しくは触れませんが、先天的な障害と後遺的な障害とで、心に与えるダメージというのは違うというのは頭には分かっていても、人生を前向きに生きるというところに素直に持っていくことがなかったのが、(ラブ・ロマンスとしてうまく物語を進めている分だけ、)個人的に少々残念な気持ちにさせられました。生きていくというところを突き抜けて考えたという意味では、昨年の「サヨナラの代わりに」という凄い力をこもった作品もあるので、本作を楽しめた方は是非観ていただいて(「サヨナラ〜」のほうが結構物語がハードですけど、、)、「生きるということとは、、」ということに想いを馳せて欲しいなと思います。

次回レビュー予定は、「グッドモーニングショー」です。

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