『おとなの事情』:スマホに集められる悲喜こもごもな情報に右往左往する人々たちのコメディ!ゲラゲラ笑いながらも、いろんな人間関係の物語をあぶり出す手法が絶妙!

おとなの事情

「おとなの事情」を観ました。

評価:★★★★☆

7人の友人夫婦が集まった食事会。新婚のコシモとビアンカ、反抗期の娘に悩むロッコとエヴァ、倦怠期を迎えたレレとカーロッタ、恋人にディナーをキャンセルされたぺぺ。他愛もない話の中から、参加者の一人、エヴァの提案で、かかってきた電話やメッセージをディナーの間、皆にオープンにすることに。女性陣に詰め寄られ男性陣も渋々応じ、テーブルに7台のスマホが出揃うのだが。。イタリアのアカデミー賞で作品賞・脚本賞を受賞したコメディ。監督は本作日本初公開になるパオロ・ジェノベーゼ。アメリカ・トライベッカ国際映画祭脚本賞、ノルウェー国際映画祭観客賞などの世界でも各賞を受賞しています。

日本人にとっても、世界中の人々にとっても、身につけるツールとなっているスマートフォン。携帯電話と呼んでいる時代は、電話やせいぜいメールを使う端末というイメージでしたが、今ではカメラで写真やムービーを撮り、ゲームで楽しみ、SNSで情報を発信し、オフィスソフトで仕事をするなどなど、PCと同じというか、PC以上に現代人にとって身近なツールになっているかと思います。でも、こうしたマルチメディアツールであるからこそ、人には見せることができない超プライベートな情報も溢れること然り(笑)。愛する息子・娘、ペットの写真くらいなら可愛いものの、、アダルト系のアプリであったり、家族や友人には知らせてないSNSの裏アカウントであったり、愛人からのメッセージであったりと、人に知られたくない情報も含まれて当然。それでも何でしょう。人は潔白であることを良しというというか、自分がそんな不純なことをしていないという虚勢を張ってしまう。そのことによって発生してしまう悲劇を面白おかしく描いていきます。

イタリア映画って、本当に凄いなと思わせられる人情劇が年に1作は遭遇するのですが、今年はコレでしょう。基本的に、ロッコとエヴァの家で行われるアパートでの夕食会という閉空間で展開されるのですが、これほど人の心理をうまくえぐるような展開を考えるのがまず凄い。とはいいながらも、人間関係が崩壊してしまうようなドロドロな展開にならないと一歩手前のところで止めているのがいいと思います。それぞれのキャラクターが魅せる様々な表情にクスクス、ゲラゲラ笑えるように作ってあるのもさじ加減が絶妙ながらも、様々な人間関係の問題を織り交ぜて考えさせる作品にもなっているのです。

と、全般的に快作と思えるデキなのですが、ラストのオチのつけ方が若干セコいと僕は思ってしまいました。まぁ、ここまでドロドロにしてしまって収集がつかなくなってしまった分、締め方としては分からなくはないんですけどね。。それでも濃密な96分間を楽しめるオススメ作品です。

次回レビュー予定は、「光」です。

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