『花戦さ』:映画の器が豪華で、かつ力強い物語ベースであるものの、作品としてもだいぶパンチ力がないと感じる。。

花戦さ

「花戦さ」を観ました。

評価:★

無二の友・千利休と互いに切磋琢磨しあう花僧・池坊専好。あの織田信長の前で花をいけ、思わぬ失態で首をはねられそうになるが、機転を利かせた後の豊臣秀吉が彼を救うのだった。しかし、信長亡き後に権力者の地位を手に入れた秀吉は、利休や罪のない町衆の命を奪っていった。見かねた専好は彼にしかできない戦さを仕かけるのだが。。戦国時代の華道家元・初代池坊専好のいけばな『前田邸の大砂物』の伝説に着想を得た時代小説を映画化。監督は「起終点駅 ターミナル」の篠原哲雄。池坊華道会が戦国~安土桃山時代のいけばな作品を復元・製作。また、表千家不審菴、裏千家今日庵、武者小路千家官休庵の三千家が協力体制をとった作品。

もう数年前のことになりますが、京都の四条烏丸で働いていたとき、その京都の街の中心地に池坊短期大学という大学がありました。華道で有名な池坊というのは、四条烏丸の駅にも時折花がいけられることがあるほど、京都では有名な家元であることが知っていましたが、その池坊のスタイルを確立した初世にこうした物語があるとは知りませんでした。室町時代の中期に勃興し、池坊専好が体系化を果たした華道に秘められた歴史を知るということは非常にためになるし、映画のスクリーンの中でも池坊であったり、千家であったりの様々な芸術を堪能できるのは素晴らしいな、、とは思うのですが、映画としては少しというか、だいぶつまらない作品になっていると思います。

そもそも池坊専好という人物を、奇才でもある野村萬斎が演じるというところに違和感を感じるのです。コミカルな風貌ながらも、千利休との友情や街の人たちの虐げられる様から、自ら立ち上がる内に熱き魂を持つ男でもあるのですが、萬斎が演じると、この熱い部分がなかなか上手く伝わってこないのです。どこか謎を秘めるところがある彼の味わいは、「のぼうの城」の成田長親のような何を仕掛けるのか分からない武将なら味わいがあるのですが、とことん真っ直ぐな物語である本作では、彼の演技における所作は違和感でしか感じないのです。専好を信長から救いながらも、自ら上に立つと芸術に対しても、自らの思い通りにならないと凶行に走るようになった秀吉にしても、彼の手にかかる町衆の描写もどこか一面的過ぎて歴史ドキュメンタリーを観ているような薄っぺらさを感じてしまうのです。斬首されるシーンも残虐性を薄めるために中途半端な描写になっているのも、個人的にはどうなのかなーと思います。物語の真髄を考えても、だいぶパンチが足りない作品だったかなと思います。

次回レビュー予定は、「ローガン」です。

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