『帝一の國』:一高校の生徒会長選挙に政局の面白さをギュッと詰めたエンタテイメント作!デフォルメされたキャラクター像がすごく良い!

帝一の國

「帝一の國」を観ました。

評価:★★★

全国屈指の優秀な学生800人が通う、超名門・海帝高校。新学期を迎えた4月、この超名門エリート校に進学した帝一は父親が著名な政治家でもあるサラブレット一家に育っていた。しかし、そんな帝一の父は様々な政略にあい、念願の内閣総理大臣にはなれずにいた。そんな父の夢でもある総理大臣に自分がなって、自分の国を作る夢を実現させるために、将来の内閣入りが約束されるというこの海帝高校の生徒会長の座を狙い、優秀かつ奇抜なライバルたちと熾烈な政権闘争を繰り広げるのだった。。舞台化もされた古屋兎丸のコミックを、「溺れるナイフ」の菅田将暉主演で実写化。監督は「世界から猫が消えたなら」の永井聡。

日本人はとかく政治に無関心と言われることが多いものの、数年毎に行われる衆参の選挙であったり、連立政権時代に様々な政略争(いわゆる政局)には興味がそそられる人というのは結構あるかと思います。歴史を見ても、例えば、群雄割拠した戦国時代であったり、様々な庶民のヒーローが時代を疾走していった明治維新であったりが、多くの歴史好きを惹きつけるのは、勢力であったり、政権であったりが移り変わっていったという歴史的事実よりも、その事実の中で様々な人の心の移り変わりであったり、政治的な駆け引きがその人だけでなく、後の時代をも大きく変えていったということがドラマチックな故に、人が惹きつけられるのではと思うのです。日本人は昔からこうした人の人生をも左右されるような出来事を、(言葉悪いかもしれないですが)物見遊山的に劇として観るのが好きなのです。そこは作られたフィクション劇とは違う、人生そのものが繰り広げられるからこそ、観る側にとっては最高のエンタテイメントになっているからかもしれません。

その意味で、本作はそうした政局を、一高校の生徒会長選挙という小さな枠の中でもエンタテイメントにしていることが作品の面白さになっているのです。大きな組織の中で、どの派閥に属するとか、どの考え方に同調していくのかという人の行動は、トップの人がどういう人なのかという客観的な事実とともに、その時の世相であったり、空気であったりが周りでどういう風になびいているのかによっても左右されてしまう。結局、こういうことも拡大解釈して捉えると、例えば、国という大きな組織体の中で、その中に属する人をどう動かしていくかを様々な戦略を仕掛て動かす、それがメディアであったり、行動科学的なところであったり、リーダーのカリスマ性であったり、いろいろな要素が動いているのだというのが(何回もいいますが、本作では一学校の生徒会長選挙という選挙という枠組みですが)うまく表現されているのです。これがエンタテイメントになると着眼した原作者の視点が素晴らしいと思います。

こうした原作の面白い着眼点を、映画化するにあたって、コメディとして上手くデフォルメさせているのが成功していると思います。これがシリアスな人間ドラマにしてしまうと、途端に劇が嘘くさくなってしまう。ゲラゲラと笑いながらも、その笑いが実は人の深層心理をついていると思えるところがいくつもあって、後で思い返すとギョっとしてしまうのも事実なのです。

次回レビュー予定は、「カフェ・ソサエティ」です。

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