『シーモアさんと、大人のための人生入門』:シーモアさんの音楽観にはとても素敵で共感するが、人生入門というタイトルは少し大袈裟だと思う。。

シーモアさんと、大人のための人生入門

「シーモアさんと、大人のための人生入門」を観ました。

評価:★★

一流のピアニストとして活躍しながらも、50歳で現役を引退、その後をピアノ教師として生きたシーモア・バーンスタイン。彼の波乱の生涯を自身のインタビュー映像を交えて、明らかにしていく。数々の経験を重ねて辿り着いたシーモアの温かくシンプルな生き方は、今を生きる人々に大切なことを教えてくれる。俳優のイーサン・ホークが自ら監督を務め、89歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインの魅力に迫るドキュメンタリー。

大人は人生に迷って生きる。学生のときは幸か不幸か、親や教師、または共に育ってきた親友という教えられたり、導かれたりする存在がいつも身近にいて、生き方に迷ったときは素直に相談し、その意見を参考にしながら生きてこれた。でも、大人になってしまうと、例えば、自らのキャリアであったり、家族の問題であったり、健康や経済的なことだったりと、頭を悩ませる切実な問題はもっと増えていく。。しかし、それに対して、そんな問題を一緒に悩んでくれる人というのは実はどんどん少なくなっているんじゃないだろうか。仕事でもベテランになってくると若手を指導したり、部下を評価したりする立場になるし、家庭があれば、自分の子どもたちに対して、生きていくための手本を示さなくてはならない。僕自身もそうなんですが、僕自身がまだいろんなことが未熟なのに、そんな大人になっているなんて不思議で仕方ないときがたまにあったりします。そんなときにいつでも叱咤激励し、教え導いてくれる人がいるということは、その人にとって人生は幸せなことなのではないかと思うのです。

本作は、そんな生き方に迷える人にとって、シーモア・バーンスタインという人物が教えてくれるシンプルな生き方を学べる映画になっているように思えます、、、少なくとも題名だけは(笑)。確かに、シーモアさんは誠実な人だし、音楽に対しても、ピアノという楽器という仕事道具に対してもだし、垣根を作らずに生徒に接する姿も素晴らしいなと思えます。でも、彼のいいピアノ教師という一面と、ピアニストとして数奇な運命を生きてきた彼の人生に感心する以上に、この映画からタイトル通りの”人生”を学べるようなことはなかったかなと思えます。僕も音楽をかじったことがある人間として、音楽教師としてのシンプルな彼の音楽に対するアプローチは、それこそ優秀な音楽指導者だなとは感じますが、それは音楽家なら共感できる要素があるものの、例えば、サラリーマンが本作を観て、明日にすぐ使える人生術があるかというと少し微妙かなと言わざるをえないかと思います。

イーサン・ホークが彼のどこに惹かれ、役者人生を一変させる要素がどこにあったかをもう少し掘り下げてもらえば、人生入門らしいところが見えたかとも思います。「シーモアさんと、大人のための人生入門」ではなく、「シーモアさんの、ピアノによる音楽入門」っていうくらいのタイトルがふさわしいかなと思いました。

次回レビュー予定は、「ヤンヤン 夏の思い出」です。

コメントを残す