『バーニング・オーシャン』:爆発事故シーンの迫力は相当なものだが、作品のボリュームがいささかあっさりとし過ぎているのが少々気になる。。

バーニング・オーシャン

「バーニング・オーシャン」を観ました。

評価:★★★

2010年4月、石油採掘施設ディープウォーター・ホライゾンのチーフエンジニア、マイク・ウィリアムズはシフト勤務でいつもの通り、メキシコ湾80kmに浮かぶ仕事場に向かっていた。ホライゾンの船内では石油会社の幹部が、遅れに遅れている採掘スケジュールを何とか前倒しにしようと画策し、マイクらの目を欺き、安全テストがおざなりのまま採掘が進もうとしていた。その他いくつかの人為的ミスが重なり、海底油田掘削作業中に逆流してきた天然ガスが引火し、大爆発が発生してしまう。火に包まれながら、作業員たちは決死の脱出を図るのだが。。2010年メキシコ湾にて実際に発生した大量の原油が流出した海底油田爆発事故を、「ローン・サバイバー」のピーター・バーグ監督・マーク・ウォルバーグ主演コンビで映画化した作品。

ここ数年、一時期よりも少なくなったなーと思うジャンルが、いわゆるディザスター・ムービーといわれる災害パニックもの。昔は「ダンテス・ピーク」や「デイ・アフター・トゥモロー」、日本でも「海猿」シリーズなど、映画館のスクリーンと音響を最大限に活用し、人が如何に生き残っていくかという描写にハラハラ・ドキドキとしたものですが、とかくあまり作品数が広がってこないんですよね。という中での、久しぶりな感じな災害ものになっている本作。でも、旧来の作品と違うのは、実際に起こった出来事を背景にしているだけに単純なディザスターになっていないところが、少しエンターテイメントとして苦しい出来になっているかなと思ったりするところがあるんですよね。予告編で見られるように、映像としての迫力は十二分なんですが。。

それは作品を見終わったときに、「え、こんだけで終わっちゃうの??」というくらいに上映時間が短く感じられることにも現れています。実話がもとになっているということで、災害パニックでの迫力が実際の現場で起こった以上を描けないんですよね。その分だけ、前半部でのマイクや船長のジミーなどの人間ドラマを深いものにしようとする努力はあるのですが、実際に爆発事故が起こった後での迫力が凄くて、せっかく肉厚に描いてきたキャラクター象が一吹きに吹き飛んでしまうんです。いや、そうした努力は無駄ではないのですが、観ている側はやはり燃えたがる火柱や頻発する爆発シーンに目を奪われるので、人間性どうのこうのは問題ではなくなってしまうのです。そこに普通のディザスタームービーなら、人命救助やその中で起こる人間ドラマを悲喜こもごも盛り込んでいくんですが、そうしたドラマを実話という縛りが拡げること許さない。それは各キャラクターの行動だけではなく、例えば、運悪くハリケーンがやってきたとかいう、新しい災害を盛り込むということもできないのです。これが観ていて、非常に苦しく感じたところでした。

ただ、これをディザスターとして捉えず、リアルな事実を追ったノンフィクションドラマと捉えれば、相当に力の入ったものだと思います。エンドクレジットで実際に事故で亡くなった方の写真を掲げたメモリアムも心にしみてくるのです。でも、それでもやや人災であったという部分をもう少し掘り下げてもよかったかなと思いました。

次回レビュー予定は、「シーモアさんと、大人のための人生入門」です。

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