『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』:バートンが地に足をついた物語の中で送る楽しいダーク・ファンタジー。興業が地味だが、すごく拾い物の秀作!

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」を観ました。

評価:★★★★

通常2D字幕版にて。

孤独な少年ジェイクにとって、いつも楽しい話をしてくれる祖父は唯一の心の拠り所だった。しかし、その祖父がある日、突然謎の死を遂げる。祖父の遺言に従って、ジェイクは父と小さな島を訪れる。その島の奥には祖父に聞かされ、祖父の部屋でも目にした古い廃墟となっている屋敷があった。だが、その屋敷には不思議な魔法がかかっており、数十年前の世界とつながっていたのだった。そこで、その屋敷に暮らすミス・ペレグリンと奇妙な子どもたちに出会うのだが。。ティム・バートン監督がランサム・リグズの小説『ハヤブサが守る家』を映画化したファンタジー作品。

特殊な能力をもつ子どもたちが集められているという「X-MEN」的な側面と、時間をループするという謎の魔法設定と子どもたちを襲ってくる敵の存在という「ハリー・ポッター」的なお話が合わさったような作品なのかなと予告編から予想できましたが、いやいやそういう要素はありながらも、一歩進んだティム・バートンお得意ものながら、しかもお子様にもオススメできるレベルのダーク・ゴシック・ファンタジーになっています。まず、いいのが主人公ジェイクのキャラクター像がしっかりしていること。両親の不和から心に隙間風を感じながらも、大好きな祖父が恐ろしい死に方をしたことで、その死の要因を解明すべく、父親と歩み寄りながら島への冒険に進んでいくという、、とても等身大というか、非常に現代の若者に近い感覚の設定がなされていること。このジェイクを、「僕と世界の方程式」でも好演していたエイサ・バターフィールドがいい演技を見せています。そして、ジェイクが不思議な子どもたちの出会いに一足飛びにならないものいい。田舎島の暗い雰囲気から、子どもたちが抱える闇の部分にも上手く投影されていて、バートンらしいダークな世界観を見事に組み立てていると思います。

それに何といっても楽しいのが、ラストでのバロンとの対峙の部分。予告編でも見られる、船の出港シーンから港でのバトルシーンまで本当に楽しい。中盤までは抑えられていたこどもたちの能力を発揮する部分も、見事なまでのチームワークを魅せてくれるのもGood! 前半まではダーク・ファンタジーの色が濃かったのが、この終盤のバトルシーンを非常にライトな形にしたからこそ、ラストの味わいも非常にしっくりくるものになっていると思います。僕は「マーズ・アタック」や「アリス・イン・ワンダーランド」のようなハッチャけるバートンよりも、「スリーピー・ホロウ」や「ビッグ・フィッシュ」などの地に足がついた物語の中にファンタジックな要素を絡めてくるような彼の作品が好きなので、その延長にあるような本作はまさに快作といえる出来になっていたと思います。

ただ、惜しいのはあまりに地味で、宣伝もろくにされていないように思うことでしょうか。。「アリス〜」のときに比べて、なんか低調な興業に思えてしまいます。3Dの字幕版での公開もないことが、そのことを象徴しているような感じを受けてなりません。

次回レビュー予定は、「サバイバルファミリー」です。

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