『スノーデン』:驚くべき真実を告発したスノーデンの人物像に迫る社会派ドラマ。ドキュメンタリチックなドラマに奥行きをつけるストーンの上手さが光る秀作!

スノーデン

「スノーデン」を観ました。

評価:★★★★☆

CIAで長く国のために奉仕する情報エンジニアとして活躍してきたスノーデン。しかし、彼は国家が安全の名の下に、驚くような情報操作を行っている現実を知る。CIAを去るものの、米国国家安全保障局等でコンサルタントとして働くうちに、プライバシーを脅かしかねない実態を何とかしたいという想いを募らせていく。そして、彼は自らの危険を顧みず、香港にて、メディアに対して衝撃的な告白をするインタビューを収録するのだった。。現在も、アメリカに国家の重要機密を漏らした罪で国際手配されているエドワード・スノーデンが、その政府による監視プログラムの存在を告発するまでの経緯を、「JFK」のオリバー・ストーン監督が迫ったドキュメンタリータッチの伝記ドラマ。

同じスノーデンを取り扱った作品として、昨年のアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞に輝いた「シチズン・フォー スノーデンの暴露」という作品がありますが、そのドキュメンタリーに収録されていた香港での暴露インタビューが、まさに本作で中心的に描かれる香港でのシーン。僕は本作を観てから、「シチズン・フォー」のほうをDVDでチェックしたので、順番は逆になってしまいましたが、物語の裏側やビハインドである話をドラマとして織り込んでいるだけ、本人が登場している「シチズン・フォー」より、本作のほうが力感があるというか、心揺さぶられる作品になっていると思います。「JFK」のときもそうでしたが、オリバー・ストーンはこうした史実を中心に、その裏に潜んでいた主人公たちの感情なり、気持ちを盛り上げるようなドラマの作り方が実に上手い。社会派ドラマならではの淡々とした硬派なイメージもありながらも、「エニイ・ギブン・サンデー」のように登場するキャラクターの肉々しさというか、情熱的なパッションある部分を鮮烈に印象づける。淡々と、そして熱々とという表現が見事に決まるクールな作品になっています。

翻って、映画のテーマというところに立ち返ると、正直僕はスノーデンという人物が鳴らした警笛というものを、そんなに重要視していませんでした。9.11テロ以降、アメリカのみならず、どの国家も大なり小なり分からないところで情報統制や監視というのはされているだろうし、ジョージ・オーウェルのSF小説に出てくる”ビッグブラザー”ではないですが、物事が多様化・複雑化してこれば今まで考えられないような犯罪は起こるし、そこに国家コントロールという手が加わるのも致し方ないかと思っています。個人的に見られて困るような情報がないので、プライバシーという問題にも関心は深くなかったのですが、本作で描かれるような情報操作というところまでいくと事は深刻だと感じます。例えば、自分のSNSのアカウントが乗っ取られ、見ず知らずのことを書かれ、周りからあらぬ疑いをかけられるような社会的な関係を操作されたり、自分の携帯のSIMカードがテロリストが持っているものと情報を書き換えられ、第三国に出国した途端に、ドローンによって襲撃されたり、、、と、今までなら夢物語だったようなスパイ映画のようなことが身の回りに起こる危険があるのです。それも国家に操作されているとは知らされずに、いつの間にか危うい縁に追い込まれてしまう。これは恐怖という他ありません。

主演は、ロバート・ゼメキス監督の「ザ・ウォーク」でも印象的な役柄を演じたジョセフ・ゴードン=レビット。スノーデンに似ているか、、といわれるとそうでもないのですが、他の作品とは違う渋い孤高のヒーローを好演しています。決して、バケモノ級の演技をする俳優ではないですが、どこか渋い演技の巧さを感じる技巧派な俳優さんだと思います。

次回レビュー予定は、「破門 ふたりのヤクビョーガミ」です。

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