2016年劇場鑑賞映画ベスト10【邦画編】

それでは、2016年度劇場鑑賞映画ベスト10【洋画編】に続いて、【邦画編】をお送りしたいと思います。

邦画については、今年リバイバル上映で黒澤監督の「生きる」「七人の侍」、宮崎監督の「千と千尋の神隠し」を観ていますが、この3作品は除いたランキングとなっています。

1位 リップヴァンウィンクルの花嫁

TwitterやLINEなどのSNSが流行り、それが今までは難しかった遠くの人や業界が違って会えないような人を容易につなげるようになってきた。そこで形成される顔のないような人間関係の危うさを描くとともに、そこで繋がった人々であろうとも、人と人との関係は普遍であることを同時に描く傑作。岩井俊二監督の代表作になると思います。これは素晴らしかった。

2位 永い言い訳

こちらは1位にした「リップヴァン〜」と違い、リアルな結婚生活を送りながらも、妻が亡くなったということに涙できないほどにリアルさが希薄になった夫婦が、再びリアルな感情を取り戻していくまでの道程を描いた映画。様々な作品を通じて、リアルと虚構の行き来を行いながら、人間の本質に迫ってきた西川監督の集大成ともいえる作品になっていると思います。

3位 殿、利息でござる

予告編だけ観ると、ホンワカした時代劇コメディなのかなと思わされますが、なかなか奥深いお話。江戸時代までの中世という時代区分では、他の国より実は日本が随一の経済の仕組みを持っていたと言われますが、そんな中、いち早く公共投資の概念を生み出したという経済学的に観ても興味が湧くお話でもあり、お金で全てが終わらない人情噺にも素直にホロッとさせられます。ご高齢な方でも楽しめるので、ご両親と一緒に鑑賞なんかがオススメかもです。

4位 映画 聲の形

イジメを取り上げた作品。今年はアニメ映画では「君の名は。」が席巻しましたが、僕はこちらのほうが評価は上。イジメていた側がイジメられる側になるのはよくある設定ですが、この物語が凄いと思うのは、過去に封印してしまいそうなイジメという苦い思い出を主人公が必死に掘り起こして、壊れた人間関係を修復しようとすること。傷つき、ボロボロになりながらも掴んだ先に、感動のラストが待っている。映画鑑賞後、原作コミックも通して読んだのですが、僕は映画版の終わらせ方が好きです。原作ファンも必見!!

5位 怒り

これも1位の「リップヴァン〜」に関係してきそうな作品。素性の分からない出会いの中で、残虐な殺人事件が引き起こした疑念が、幸せだったはずの生活を押しつぶす悲しさを描いた作品。人との新しい出会いは幸福をもたらすが、一度生まれた疑念から幸せを切り離してしまうと、再びそれをつなぎとめるには相当の努力が必要なことを痛感させられます。どのエピソードの俳優陣もすごい名演を魅せてくれる秀作です。

6位 この世界の片隅に

年末に向けて口コミで話題が拡がり、当初全国8館くらいの公開が、年明けには200館規模に拡大される予定の作品。この映画の凄いのは、今まで悲しいところしか描いてこなかった日本の戦争映画の枠組みの中で、その時代にも現代を生きる私たちと何ら変わらない日常が流れていたことを示したこと。もちろん、生活は苦しいし、空襲は激しくなり、人は容易に亡くなる、、その中でも人は笑い、泣き、怒り、、生きてきた。その生きた人々の軌跡を知ることで、私たちがもう一度ピュアな気持ちで戦中の時代を見つめなければいけないことを教えられた作品。

7位 ぼくは明日、昨日のきみとデートする

本作をSFというと、科学的に成立しないことがいくつか出てくるので、パラレルワールドを使ったファンタジック・ラブ・ストーリー、、と捉えるべきでしょうか。「君の名は。」はヒットした今年だからこそ、こうした偶然の不思議がつないだ奇跡のラブドラマというのが受け入れやすいんじゃないかと思います。毎日がすれ違っていくという2人の哀しい愛の物語が、京都というどこか異世界とつながってそうな空間だからこそ一層映えるように思います。現在、絶賛公開中なので、是非劇場で。

8位 後妻業の女

お金に対して、とことんゲスいが、クライアントになる富豪の前では愛おしい女になる武内小夜子を描いていく物語。ゲラゲラと笑いながらも、お金にまつわる人の本性が前半にこれほどまでかというほどあぶり出され、後半は謎の女性・小夜子の真の姿に迫っていくと、物語全体がファンタジーのように昇華されていくという不思議な作品。お金を騙し取られても、お金はあの世には持っていけないから、きちんと使っちゃったほうが人生幸せなんじゃない!?と思えてくる作品です(笑)。

9位 バースデーカード

もう作品全体通して、ピュアすぎるくらいにピュアな作品。予告編で感じられたこと、もうそのままストレートに観ているコチラに投げ込んでくるのです。でも、このピュアさが逆に作品の力強さになっているのです。幼き頃に、死んでしまった母。その母が遺してくれたものは、単純な手紙だけでなく、手紙から紡がれる人とのつながりでもあるのです。演じ手の俳優たちが、誰もがキラキラ輝いていたことも好印象な作品でした。

10位 シン・ゴジラ 

評価は正直低いのですが、今年を代表するベスト10には入れないといけないと思い、この位置で紹介させてもらいます。結局、スクリーンでも2回観ました。今までのゴジラ映画が良くも悪くも、お子さま向けな怪獣映画の枠を出そうで出なかったのに対し、本作ではディザスター(災害)ムービーの面白さや、ポリティカル(政治劇)ムービーの巧みさを取り入れ、ハリウッドに紹介しても遜色ないエンターテイメント性を兼ね備えた作品になったと思います。初代「ゴジラ」のようなメッセージ性はやや希薄化したものの、このエンタメ・ゴジラとしての出発点は非常に面白いし、今後も続けてもらいたい。ハリウッドの「GODZZILA ゴジラ(2014)」がむしろ昔の怪獣映画への原点回帰をした(監督は、「ローグ・ワン」のギャレス・エドワーズ!)のに、日本が真逆の方向性にかじを切ったのも面白いです。非常に少ないですが、まだ劇場公開されているところもあるので、終わらないうちに是非スクリーンで。

<番外編> 君の名は。

2016年を象徴する作品なので、番外編ということで書いておきます。映画の話題性・内容もそうですが、2〜3週で打ち切りが多いメジャー公開作にあって、2016年8月26日に公開された本作は現時点で4ヶ月公開をキープし、10〜20代向けのアニメ作品で今冬はディズニーのような大作がないだけに、未だに大きなスクリーンで公開されている劇場が多いようです。10代世代がデートや友だちと一緒に安牌で楽しめる作品でもあり、ニュースで話題となって、高齢の方やご家族連れで観られる方も多くなっています。年末時点で興収200億を上回り、来年の1月13日から期間限定でIMAX版での公開も決まりました。先日、「ローグ・ワン」を観た際に、IMAX版の予告を観たのですが、これがなかなかと良さそうです。彗星の落ちるシーンや、御神体がある山の上のダイナミックさはIMAXにとっても映えていました。これは是非観なくては(笑)。。新海監督作品の中であっては、分かりやすく、時代感を上手く取り入れたことが成功につながっていると思います。これは、2017年の春休み映画まで引っ張れそうな気がします。

さて、全体的には昨年とは真逆で、洋画は大作でも見応えがある力のこもった作品が多かったのに対し、邦画は上位トップ3まではいいものの、それ以外は全体的な評価としては一段落ちる感が多い2016年だったかなという印象です。来年も、150〜200本の間を目処に、スクリーンで多くの作品に出会いたいと思います。

今年はこの記事で終了です。それでは来年もよい一年をお迎えください。

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