『ぼくのおじさん』:松田龍平が好演だが、彼の演技が冴えれば冴えるほど、作品で彼が浮いてしまう不思議な作品。。

ぼくのおじさん

「ぼくのおじさん」を観ました。

評価:★☆

”自分のまわりにいる大人について”という作文の宿題を課せられた小学生の雪男。彼が題材に選んだのは、いつも万年床でマンガを読み、屁理屈ばかりこねている居候のおじさん。おじさんの生活をありのままに綴っていく雪男だったが、そのおじさんに見合い話が持ち上がる。最初は嫌がっていたおじさんだったが、無理やり連れて行かれた叔母が主催のギャラリーで、一目惚れをしてしまう女性に出会ってしまう。。北杜夫の同名小説を、「苦役列車」の山下敦弘監督が映画化した作品。

本作を見て感じたのは、このジャンルの作品は興業が難しいだろうな、、という感想でした。原作が「どくとるマンボウ航海記」や「怪盗ジバゴ」などの作品で知られる北杜夫。北先生のすべての作品を読んだことがあるわけではないので分からないですが、僕のイメージでは、北作品というのは青少年文学の作家というのがどうしても拭えない。本作の演出を見ても、ターゲットは小中学生なのかな、、と思うような展開になっています。お話としても、小学生・雪男が書いている作文に描かれる形で、おじさんの姿があぶり出されていくので、作品としても高尚なものに仕立てるのが難しい。じゃあ、小中学生が見るようなパッケージになっているかというと、うーん、、という感想になってしまうのです。

アニメやコミックが原作の作品だったら、多少はぶっ飛んだような設定も入れやすいのでしょうが、こうしたほのぼのストーリーになってくると、どうしようにも弄くり難い。かといって、大人が見るのに耐えられるようになっているかというと、松田龍平演じるツッコミどころが多いキャラクターというのは確かに笑えるものの、雪男の家族の設定などは、まるで絵本に出てくるような超一面的なリアルでない家族像になってしまっている。ここにリアルなおじさんを松田龍平が好演しているので、より周りより浮いてしまっている。映画は”おじさんは変だ”というけれど、僕にとっては、サザエさんよりも薄っぺらいキャラクターの家族のほうが”変”と思えてしまうのです(笑)。これはおじさんと真木よう子演じるエリーとのすれ違いの恋のところも同じ。あまりに工夫がない直球三角関係の恋物語も、やはり少年小説だな、、と思ってしまうほどの安さを感じてしまうのです。

この作品の公開も夏休みなどの時期に合わせないのも、興業側がそんなに売れないと見込んでいるとしか思えません。小中学生向きと開き直るなら、もう少し公開の方法を考えたほうがいいように思えてしまった作品でした。

次回レビュー予定は、「溺れるナイフ」です。

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