『人間の値打ち』:ようやく日本でも公開されたイタリア7冠に輝いた極上ミステリー。秋の夜長にはピッタリと楽しめる面白さ!

人間の値打ち

「人間の値打ち」を観ました。

評価:★★★☆

クリスマスイヴ前夜、イタリア・ミラノ郊外で一件のひき逃げ事故が起こる。街で不動産業を営むディーノは、後妻で心療内科医のロベルタと娘セレーナの3人で暮らしていた。中産階級のディーノ一家だったが、娘セレーナは大富豪ジョバンニの息子と付き合っていた。ディーノはセレーナをジョバンニの家に送り届けたとき、偶然屋敷の主ジョバンニ本人と知り合い、彼が主宰しているファンドに投資させてくれないかと持ちかける。一方、ジョバンニの妻カルラは何不自由なく暮らしていたが、夫のお飾りになる毎日に鬱憤を募らせていた。また、セレーナはジョバンニの息子と距離をおき、ロベルタの診療所で偶然知り合った少年との中を深めていた。。郊外で起こった、この事故をきっかけに、経済格差のある3つの家庭に隠された秘密が浮かび上がっていく。イタリア・アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞など7冠に輝いたミステリー。監督・脚本は、「来る日も来る日も」のパオロ・ヴィルズィ。

事あるごとに、イタリア映画の凄さを今更ながらに語っていますが、本作も質の高いミステリー。冒頭に、映画本編とは関係なさそうな交通事故のシーンから始まり、ディーノ、カルラ、セレーナの3人の主観の物語が、ちょうど交通事故の1年前から並行にオムニバスの形で始まっていきます。3人の物語になっているので、例えば、ディーノが最初にジョバンニと会うシーンなどは都合3回繰り返し描かれるのですが、ディーノ視点、カルラ視点、セレーナ視点の3人の見方によって背景が語られ、最初のほうにはよく見えなかった物語の背景が徐々に明らかになってくると同時に、冒頭の事故が起きた要因が分かってくるという群像サスペンス劇。計算されたドラマの緻密さは、まるでパズルのピースを1つずつハメていって、全体像が徐々に浮かび上がる面白さがあります。

こうした入れ子になった物語をハメていく面白さと同じく、この映画を面白くしているのは、作品の雰囲気から伝わる何とも言えないラグジュアリーな高級感でしょう。高級感ただようブランドイメージのイタリア発作品ということもあるかもしれないですが、3つの階層の家族が登場してくるものの、キーとなってくるのが大富豪ジョバンニ家を中心に回ってくることが大きいと思います。アガサ・クリスティの小説でも、はてまた名探偵コナンのようなコミックでも、サスペンスものはなぜか大富豪というのがピッタリと来てしまうのです。セレブな家庭が殺人、スキャンダル、遺産争いで右往左往していく姿は、一般庶民には娯楽の種になるという、フライデー根性が旺盛な庶民の我々には多くあるのです(笑)。正直、結末もそう大したものではないですが、作品の面白さと高級感で十分に満足できる鑑賞になることは請け合いです。

次回レビュー予定は、「GANTZ:O」です。

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