『ある天文学者の恋文』:ある天文学者が仕掛けた愛の形。至るところのセンスの良さが大人な恋物語を仕立てている!

ある天文学者の恋文

「ある天文学者の恋文」を観ました。

評価:★★☆

天文学者として世界的な権威であるエドは、教え子のエイミーと密かな恋人関係にあった。いつも通りに、ホテルでの密会後、エイミーと別れたエドはそのまま帰らぬ人となる。エドの突然の訃報を受けたエイミー。だが、彼女の元に彼からの手紙や贈り物が届き続けるのだった。その謎を解くため、エイミーは彼の縁の地を訪ねるのだが。。「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督によるミステリアスな愛の物語。

愛するものと突然の別れが訪れた時、人は絶望し、生きていることも虚しいと思える日々を過ごすことになる。仮に、自分の命があとわずかだと知った時、愛する人のために、自分の死後もその人を支えようとすることができるだろうか、、本作はそのことを問うた愛に関する物語になっています。たとえ、映画という枠を借りているとは言え、どうしても人は生きているという視点で物事を考えがちになります。本作も普通に見ていると、エドではなく、エイミーの視点で(もちろん、映画がエイミーの物語として語られるため、当然なのですが)観てしまいます。すると、死んでいるはずなのに、いつものようにメールなり、贈り物なりが届くのが不思議という、ファンタジーよりはサスペンス風の謎を解明しようとする、エイミーの目線で物語を見させられるのです。その全ての謎が解明された時、多分に、これを愛されている、、というラブ要素よりは、死んでいるはずなのに気持ち悪いな、、という感覚にとらわれる方が多いのじゃないかなというのが、僕の素直な感想でした。

こういう感覚も、洋画を見るときにたまに感じる、日本人と欧米人との感覚の違いなのかなと思います。日本人はどちらかというと、死に対して、清い感覚というか、スパッと切り替えるところの美学というのを追求する傾向にあるので、たとえ愛する人を残しているとはいえども、自分ではなく、他に愛してくれる人を探すとか、何不自由なく生きれるように資産を残すとか、そういうところに注力するのじゃないかと思います。本作のように、(少しネタバレになりますが)愛する人の行動を逐一予測して、それを支えようと先に先に計算して支えるというのは、何か人生をコントロールされるような束縛の形の愛になり、これが愛することとイコールにできるのかというところが、本作の良さを理解する分岐点のように思います。とはいいつつも、最後は美しく収まるところに美しく収めるところが、如何にもトルナトーレらしいなと思わせるところでもあります。

また、スコットランドやイタリアなどの美しい風景に、ジェレミー・アイアンズと大人の雰囲気が十分なオルガ・キュレンコという、ダンディ&セクシーな2人が演じるので、映画としてはすごくスクリーン映えする作品になっています。モリコーネの音楽も最高の一言。昨年も、「アデライン 100年目の恋」という大人なラブストーリーがこの時期に公開になっていましたが、秋の雰囲気にピッタリな大人な映画になっています。

次回レビュー予定は、「メカニック ワールドミッション」です。

コメントを残す