『団地』:団地の人間ドラマを飛び越えて、あらぬ方向に正しく飛び出すキテレツ作品!

団地

「団地」を観ました。

評価:★★★

映画「顔」の藤山直美と阪本順治監督が再びタッグを組んだ人間ドラマ、、というのか、これ?っという作品(笑)。この藤山直美という人はなかなか日本の役者の中でも稀有な存在で、テレビにほとんど出ない舞台役者ということもありますが、何か彼女の演技は次に何が用意されているのか、ドキドキ・ワクワクとしてしまう。そんな役者だと思います。題名は「団地」、予告編も団地で進行していくドラマのように思えますが、この作品は一筋縄では行かない形になっています。

表現するとネタバレになってしまいそうですが、僕は本作を見終えた時、これはスピルバーグの「未知との遭遇」だなと思いました(笑)。今回の団地という設定が、社宅なのか、公営住宅なのかイマイチわかりませんが、同じような建物群が建ち並ぶ中で、日常としては大きな変化のない毎日。ここに長年の漢方薬局を閉じた、岸部一徳と藤山直美演じる山下夫婦が引っ越してくる。そんな新規なメンバーを見つめる団地に昔から住んでいる住民たち。代わり映えもしない毎日の中で、彼ら彼女らにとっては新規の山下夫婦にどうしても好奇心の目を向けてしまう。表面上ではわからない、いろんなドラマが繰り広げられる団地。その中で、新規メンバーだったはずの山下夫婦こそが、団地に住む住民の中で一番特異な存在になっていくのです。

ラストを見ると、なんじゃこりゃ、、と思われて然りな作品なんですが、それでも収まるところにしっかり収まっているまとまりさがあるのです。それも岸部一徳、藤山直美の夫婦の主演者2人と、石橋蓮司、大楠道代などのベテラン俳優がしっかりとした演技で作品を支えているからこそ。彼ら彼女らの強力なキャラクター像がなければ、映画全体が文字通りに宙に浮いてしまうような作品になってしまったと思います。おかしな作品なので、テーマの解釈はいろいろとありそうですが、僕は団地に集った人の噂話が作り上げた1つのアンダーワールド、アメイジング・ストーリーなんじゃないかと思っています。それだけ噂と憶測だけで物語をつくってしまう人間こそ、何だか考えると末恐ろしい存在。「団地って、おもろいなー」という藤山直美の台詞も妙に納得してしまうのです。

次回レビュー予定は、「素敵なサプライズ」です。

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