『神様メール』:世界観は面白いが、物語に今ひとつ推進力が足りない。。

神様メール

「神様メール」を観ました。

評価:★★☆

地球上で起きている色々なことは全て神様の思し召し。それも、神様はとあるアパートの一室で陰鬱な性格の男が、パソコン1つで世界をコントロールしていた。。設定が面白いところはさすがヨーロッパ映画作品と思わせる作品。日本での公開は宣伝がやけに乙女チックなところが気になりますが、元気な女の子エアを中心に繰り広げられる物語は「アメリ」のような楽しい世界観に溢れています。監督は、「ミスター・ノーバディ」のジャコ・ヴァン・ドルマル。

神様を擬人化し、上自身が人間臭くドラマを生み出してるのはギリシア神話の世界から行われてきたこと。日本でも、古事記や日本書紀に登場するような八百万の神々というのは、仏教やキリスト教などの世界の大半を占める絶対神を中心とした宗教よりも、人間の真髄をドラマとして織り込まれているんじゃないかと思っています。閑話休題、本作のほうに話を戻すと、そうした宗教的な匂いはしないまでも、私たちのこの世を動かしている神様というのは1つの神という形で描かれています。しかし、そこに絡んでくるのは神の奥さん、息子、そして主人公である娘エアの存在。頑固者で融通の聞かないうえに、この世を生きる人々に苦役しか与えない神に対し、エアは反撃を仕掛けていくのです。

この世を動かす仕組みを、神の世界の原理と上手くバランスを取りながら描く物語構造が結構秀逸。その中で、キリスト教などの宗教偶像を上手く散りばめながら、作品全体も神秘化させていることに成功しています。そして楽しいのは、やはり「アメリ」ばりに愛くるしく動きまわるエアのバイタリティ触れる姿。このエアのような少女に世の中を救ってくれる希望があるのならば、世界もそんなに捨てたものではないかと思えてきます。ただ、そうした楽しさが映画の面白さと上手く結びついていないのがもどかしい所。これもエアの父親である神様自身に、いい意味での怖さがないというか、エア自身が追いつめられた感がないので、作品の後半部がのっぺりした印象が拭えないのです。設定は面白いのに、それを上手くお話自体の面白さに昇華できれていないのが非常にもどかしい作品でした。

次回レビュー予定は、「海よりもまだ深く」です。

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