『星ガ丘ワンダーランド』:素敵な映像美が、物語のヘンテコさの増幅剤となってしまっている。。

星ガ丘ワンダーランド

「星ガ丘ワンダーランド」を観ました。

評価:★

印象的なGoogleのCMなどのCMクリエイターとして活躍する柳沢翔の劇場監督デビュー作品。田舎で奥深いところにある星ガ丘駅にて、駅員兼落し物預り所に勤務する主人公・瀬生温人が、幼き頃に家族を捨てた母親の死によってうごいてくるストーリーを映像化している作品。東北のどこかの街の印象ではありますが、「トワイライトささらさや」のような架空の場所を舞台とした人間ドラマに仕立てています。

さすがにCMクリエイターだけにあって、映像の使い方というのは上手いと感じる部分が多い感じがします。雪深い東北をイメージした架空の田舎に対し、白い基調とした淡い色彩をフィルターをうまく活用し、温人が働く駅や舞台ともなってくる遊園地(ワンダーランド)、ごみ処理場、過去のフラッシュバックで現れる田園風景なども見た目の印象だけでなく、どこか暖かみを感じるような映像効果を上げていると思います。しかし、それはあくまで見かけの印象であって、物語が絡んでくると途端にバランスが悪くなっているのです。映画の前半はそれほど感じなかったのですが、母親の死から物語が急展開してくる後半は、なぜか主人公のモノローグに寄りの絵が多く、観ているだけで息苦しくなってくるのです。おまけに、お話自体も結構陰鬱な内容なので、より暗くドンヨリとした雰囲気になってくる。これは狙いなのかどうなのかは不明ですが、間違った方向に映像効果がかかっているように思うのです。

お話自体ももう少し整理したほうがいいんじゃないでしょうか。温人が母親に対して、愛情を乞うていることに囚われていることは分かるものの、それに束縛されすぎていて物語全体が窮屈になっているような印象があります。なので、とことん卑屈になっていく温人に対し、駅に訪れる不思議な人々がその負の部分を浄化できるほどの力をもちあわせていないのです。よって、駅での不思議な出来事は寓話としてではなく、単なる変なシーンとしてしか映ってこない。そこの映像がまたよくできているので、”変”という部分が増幅させる効果しかもたらさないのです。

次回レビュー予定は、「マネーショート 華麗なる大逆転」です。

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