『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』:こんなに観ていて、元気になれるドキュメンタリーも久しぶり!

アイリス・アプフェル

「アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー」を観ました。

評価:★★★☆

インテリアデザイナー、実業家として94歳になった今でも現役で頑張っているアイリス・アプフェルの日常を描くことで、彼女の半生をも炙り出すドキュメンタリー。監督は「ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター」のアルバート・メイズルス。今年は結構ドキュメンタリー映画を数多く観ているのですが、その中でも観ているこちらも元気にさせてくれる秀作となっています。

日本はご存じのように高齢化社会に突入。僕が子どもの頃は、60歳定年というのが本当に一般的でしたが、今や早く50代くらいからセカンドライフを中心に活躍するとか、逆に60を過ぎてもシニア社員などのポジションで頑張る中高年の方も増えてきたように思います。こうした60歳定年が崩壊してきたのも、公的年金制度が崩落してきており、年々と受給開始年齢が上がり、60歳くらいで引退してしまったら食うに困るという切実な悩みもあるかもしれないですが、僕も(稼ぐ稼がないは別として)身体が言うことを聞く限りは、働き続けたいと思うほうです。身体を悪くして、長い休職とかも経験している身としては、会社や学校は毎日嫌だ嫌だと思いながら行くものの、本当に何もない毎日が続くと、人間は楽だけどボケてしまうもの早いなと体験しているからだと思います。本当にいいのは、自分でペースを調節しながら、好きなことを仕事にしていける生活なのかもしれない、、と、本作を観ながら感じました。

本作に登場する実業家アイリスは本当に元気。見た目は確かに皺くちゃのお婆ちゃんですが、バイタリティは若いものには決して負けていない。それもどれも彼女自身が本当に好きなことを仕事にし、毎日そのことに打ち込んでいるからだと思います。彼女がこうして働けていけるのは、自分自身が好きなこと(得意なこと)に取り組み、それを積極的に社会にアウトプットするとともに、彼女を支える夫や周りのスタッフの支援があるからだと思います。そのこと自体は彼女自身が十分理解し、自分の価値にとことん磨きをかけるから、周りも彼女に引き込まれながら自分たちの新たな仕事を見出していく。彼女が作り出す世界に誰しも魅了され、そこにいろいろなものが巻き取られ、一つの産業が生まれていくのです。彼女自身が一種のブランド化し、トップデザイナーであり、トップクリエイターであり、イコンでもある姿が、そこには描かれているのです。

彼女のようなビッグな世界でなくとも、あなたを必要としている世界がどこかに必ずある。自分自身だけでなく、周りも、後を受け継ぐ人たちにも気を配っていく彼女の生き方は、いろんな分野を超えて普遍的な仕事の仕方で、参考になる人も多いかと思います。

次回レビュー予定は、「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」です。

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