『子どもが教えてくれたこと』:幼き頃から重い病を抱えながらも、純粋に生きる子どもたちを描いたドキュメンタリー。生きることとはどういうことなのかを自然と悟っている彼ら彼女らから生きるパワーを貰える作品!

子どもが教えてくれたこと

「子どもが教えてくれたこと」を観ました。

評価:★★★★

肺動脈性肺高血圧症を患う9歳の少女アンブルは芝居が大好き、アルジェリア生まれで腎不全により腹膜透析を行う7歳の少年イマドは自分の病気のことをよく理解している。神経芽腫(骨髄)を患うサッカー好きな5歳の男の子カミーユは父親との練習を欠かさない。胸腔内の交感神経節から発生した神経芽腫を患う8歳のテュデュアルの目の色はグリーンとブラウン、左右で異なっている。8歳の男の子シャルルは、表皮水疱症というとても肌が弱い病気のため、身体を包帯で覆っている。平日は病院で過ごし、週末は家族が待つ自宅へ。病院ではいつも親友のジェゾンと一緒で、廊下には二人の笑い声が響き渡る……。生まれたときから重い病を抱える少年少女らの日常をつぶさに記録、家族との時間や学校でのひと時など、治療を続けながらも毎日を前向きに生きる姿を捉えていく。様々な病気を持つ5人の子どもたちを見つめるドキュメンタリー。監督・脚本は、自身の娘を病気で亡くした経験を持つジャーナリストのアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン。

シャルルとジェゾンが小児病棟を駆け回るオープニングから始まるドキュメンタリーですが、僕にとってはすごく既視感漂う映像でした。僕も自分の障害で小さい頃から検査や手術で病院を出たり入ったり、小学校の頃は夏休みなどの長期の休み(もしくはその前後)を利用して、東京の病院にまで入院してたりもしましたが、大人になった今でこそ嫌ですが、その頃は入院が一種のイベント毎で楽しみでもあったのです。新幹線に乗れるとか、研修医のお兄ちゃんや看護師のお姉ちゃんにかまってもらえるということもあったけど、一番楽しかったのは同じ小児・小児外科病棟に入院してた子と友達になれたこと。上は高校生から、下は2、3歳くらいの子まで年の垣根なく遊んだりしたし、周りの大人にいたずらしたり、車椅子を持ち出して、長い直線廊下でレースしたり、プレイルームでダンスしたりと今思い出しても楽しいことしかなかったです。でも、同時に昨日まで一緒に遊んでいた子が元気に退院していってしまったり、逆にICUに入ってしまったり、治療のために足を切断しなくちゃならなかったり、抗がん剤で髪の毛が抜け落ちていく姿を見たり、そして一番悲しかったのは天国へ先に旅立ったりした子も正直いたりしました。だから、楽しい中にも生きたいという気持ちとは裏腹に、肉体が思うようについてこない人生とか、運命とかいうものの儚さというか、残酷さというものを小さいながらに感じたりもしたと思います。だから、今生きているということは(僕以外の人も含め)、奇跡だと思うし、そんな奇跡の中で毎日いろんな人や物事と出会わせてもらい、楽しく生きていけることは常に感謝しないといけない。そのことを今は出会えない彼ら彼女らに”教えてもらったこと”といっても過言ではないのです。

映画に戻ると、健気だなと思うのは、残酷な人生の運命という中で、重い病を抱えることになった子どもたちの生きることに純粋な姿でしょう。無論、(僕もそうですが)小さい頃から自分がそういう身体だから仕方ないと思うところもあるのですが、芝居好きなアンブルやサッカーをやりたいカミーユにとっても、自分の病はどう見ても足かせになってしまうことは然り。でも、周りが普通にできる、自分はできないというレッテルを貼らず、自分は自分のペースで好きなことに向き合っている姿にとても心が動かされるのです。僕なんかは心が小さいので、できる健常者の周りが羨ましくてしょうがなかった(笑)。その中で悔しい思いもしたり、それを大人になったら忘れられるだろうと早く月日が経ってくれと思うときもあった。でも、大なり小なり、大人になっても病気や障害を持つ苦労は変わらないし、結局それを意識させずに、好きなことに打ち込める環境を提供していくことが病を抱える子をもつ親なり、サポートしていく周りの人間の役割は重要なのではないかと思うのです。病をなんでもないことと一蹴できる彼ら彼女らの強い生きる力に、たくさんのパワーをもらえる作品だと思います。

次回レビュー予定は、「ボス・ベイビー」です。

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