『坂道のアポロン』:あのとき、同じ空間で音楽を奏でた3人の物語。ジャズと映画というのは最高の組み合わせだと、改めて感じる作品!

坂道のアポロン

「坂道のアポロン」を観ました。

評価:★★★

日本語字幕版付き上映にて。

転校先の高校で、札付きの不良と恐れられている千太郎と出会った薫。しかし、ジャズドラムをやっている千太郎と、自分の想いを押し殺し、ピアノで気を紛らわせていた薫は音楽をキッカケに友情をはぐんていくことになる。千太郎の幼馴染で町のレコード屋の娘・迎律子の家の地下室で、ドラムとピアノでセッションに明け暮れる日々。やがて、薫は律子に恋心を抱き始めるが、律子の想いは千太郎にあるのだと知るのだった。そんな切ない三角関係だったが、千太郎と2人で奏でる音楽は最高だった。だがある日突然、千太郎は2人の前から姿を消すのだった。。小玉ユキによる同名コミックを「先生!、、、好きになってもいいですか?」の三木孝浩監督が実写映画化した作品。

映画の本編とは関係ないですが、本作は鑑賞側の時間の都合上、邦画ですが、主に聴覚に障害を抱えられている人向けの日本語字幕付きでの上映回で鑑賞しました。劇場にどれだけそういう方がいられたのか分かりませんが、健聴者の方でも、邦画の日本語字幕というのもちょっと味わいがあるなと感じました。どうしても台詞より字幕が先に出てしまうという欠点はあるものの、原作が小説や、本作のようなコミックものですと、映画なんですが、まるで原作を読んでいるような鑑賞に浸れるのです。特に、本作はジャズという音楽を取り上げている作品なだけに、台詞部分とセッション部分が上手く切り分けて鑑賞できるので、音楽シーンがとても印象的に残ります。この味わいは独特なので、機会があれば鑑賞されることをオススメします。

と、本作と関係ないところに触れながら、本作の振り返りをしますが、僕はこの作品、コミックは読んだことないものの、アニメ化されたシリーズがすごく好きで、公開前から期待しながらも、ちょっとアニメ版のイメージとはかけ離れた配役に少し危惧を持っていました。薫役の知念侑李はいいものの、やっぱり豪腕で粗野だけど、実は心がすごく繊細な千太郎役を中川大志が努まるのかというところが心配だったのです。見た目だけのイメージも、コミックやアニメ版とは少し違う綺麗な顔のイメージの中川くんというのも気になるところだったのですが、いやはやすごく頑張っている演技を見せてくれていると思います。この千太郎という役が本作では物語を動かすキーになっていて、彼が終盤に消えてしまうのも、彼の隠されたバックグラウンドにもあるのですが、それを中川大志という俳優が持っているキャラクターとうまく合わせてきたと思います。それに、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」でも好演を見せた小松菜奈がいいですね。ヒロインとしてだけではなく、物語に変化を与える俳優として本作でも上手い味わいを出していると思います。

それに、映画とジャズって、すごく相性がいいんです。最近、劇場で見れなかった「ブルーで生まれついて」という作品を自宅で鑑賞したのですが、ウーハーから響くベース音が最高に気持ちいい。それは本作のセッション場面でも上手く表現されていて、特に桂木も含めた、レコード店の地下室のセッションは映画館の音響を最大限に効かせるいい音を響かせてくれています。アニメ版好きとしては、少し描写に迫力が不足しているシーンもなくはないのですが、音楽を含めたパッケージとして映画館映えしている作品にはなっていると思います。

次回レビュー予定は、「しあわせの絵の具」です。

コメントを残す