『羊の木』:地方の寂れた田舎町に移住してきた6人の元殺人者。作品の狙いと空気感は悪くないが、物語の進行といまいち噛み合っていない。。

羊の木

「羊の木」を観ました。

評価:★★★

さびれた田舎町の魚深市。市役所職員として働く月末一は、この町に新たに移住してくる6名の男女を受け入れるよう命じられる。しかし、受け入れた6人の男女は言動に落ち着きがなく、尋常でない様子。しかも、彼らには必ず不審な同行者が付き添っていた。その異様な様子に違和感を感じた月末は上司を問い詰めたところ、実は新仮釈放制度により自治体が身元引受人となった元殺人犯であることを知る。過疎化が進んでいる町としては、この国家プロジェクトを受け入れなければいけない状況だったが、平穏だった町の日常がゆっくりと狂い始めてくる。。ギャグ漫画の巨匠2人による同名漫画を基にした、「紙の月」の吉田大八監督の人間ドラマ。2014年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した原作を大きくアレンジした作品。

どことなく静かな雰囲気の中で始まっていくスリラー劇で、不穏な空気感を演出していく手法は嫌いじゃない形のオープニングの作品でした。「桐島、部活やめるってよ」で業界では注目を浴びた吉田大八監督ですが、この人は日常の中に非日常を描き出すのが上手いと思います。本作についても、過疎化が進み、町中は古くから住んでいる知り合いしかいないような地方都市の日常という中に、元殺人者という一癖も二癖もある人間を投入することで、異常な非日常が組み上がってくるという作品構成になっています。ちょっと設定は違うかもしれないですが、70年代のゾンビ映画のような、判を押したような代わり映えのない田舎町の中に、何か異様なものがジワジワと町を侵食していく様を、いい空気感で盛り上げていっていると思います。

ただ、こうしたいい空気感がストーリーとイマイチ噛み合っていないというか、町中で起こっていく事件の顛末と交わり合って、作品を動かしていくような形になっていないのが残念なところ。特に、映画の後半で、町に古くから伝わる悪魔的な祭りを登場させるのはいいのですが、事件の犯人が追い詰められていく様があまりに陳腐というか、ラストもVFXを使った奇抜な演出の割には安っぽさが拭えないかなという印象が残ってしまいます。6人の元殺人者についても、町で起こる事件の本流に関わる人物や、改心を見せていくキャラクターはいいのですが、その他でただ怪しげな雰囲気だけを醸し出す役回りの人物だけになっている人はちょっともったいない使われ方をしているかなとも思います。ただ、優香が演じる大田理江子は、個人的にはツボなキャラクター像でしたけどね(笑)。

次回レビュー予定は、「ハッピーエンド」です。

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