『blank13』:長い間行方をくらましていた父親の葬式に集う珍妙な人々。葬式劇の狙いは分かるが、作品としては決まっていない。。

blank13

「blank13」を観ました。

評価:★★☆

コウジの父親は13年前に突然蒸発し、長い間行方不明の状態が続いていた。やっと判明した父の消息だったが、その体はガンに侵されていた。母と兄は多額の借金を残したまま行方をくらました父親の存在を許せなかったが、コウジは小さい頃にキャッチボールをしてくれた優しい父親の姿を忘れられないでいた。しかし、そんな父も再会した3ヶ月後に他界してしまう。そして葬儀当日、少ない参列者たちの口から、コウジの知らない父の姿が明かされるのだが。。俳優の斎藤工が、“齊藤工”名義で手掛けた長編初監督作品。

俳優として各所で活躍中の斎藤工による初監督作品。彼も兄役で出演していますが、作品の主役はコウジであり、彼の目線から観た父親像と、母と兄、そして参列者によって浮彫りになってくるという人間ドラマになっています。この物語構造で思い出すのが、黒澤明監督の「生きる」。葬式の場面になる後半部で、主人公の渡辺が不在の中、同僚たちが語る生前の彼の生き様で、主人公の真の姿をあぶりだしていくという形。本作はあれほどしっかりとした区分けはされていないドラマですが、葬式を通じて、父の様々なキャラクターが浮かび上がっていく様はなかなかだと思います。

ただ、本作狙いがすべて当たっているかというと微妙なところ。特に、葬式のシーンは個性的な役者が演じている分だけアクが強いドラマコメディになりすぎていて、肝心の浮かび上がらせるべきな父親像が少し薄くなってしまっているように感じます。笑う要素だけを担うキャラクターは早々に退出させるなど、やや都合の良すぎる流れにしてしまっているのも気になるところ。全体的な狙いどころは間違っていないだけ、少し残念な作品でもあります。

次回レビュー予定は、「YARN 人生を彩る糸」です。

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