『リバーズ・エッジ』:文字通り傷つきながらも大人になっていく90年代若者の青春記!少々残酷な作品だが、だからこそ心に響く!

リバーズ・エッジ

「リバーズ・エッジ」を観ました。

評価:★★★★☆

自由奔放に生きる、今どきの女子高生ハルナは、彼氏の観音崎が必要にイジメている同級生・山田をいつも助けていた。山田は、そんな彼女に「僕の秘密の宝物、教えてあげる」と誘い、大事にしている夜の河原で腐りかけた死体の秘密をハルナと共有する。また同じく死体の秘密を共有している摂食障害のモデル・こずえは、山田を介して、ハルナとも奇妙な絆で結ばれるようになっていく。一方、父親の分からない子どもを身ごもってしまったハルナの友人・ルミと、同性愛者である山田のことを知らずに一方的に彼を好きになっているカンナは、それぞれに過剰な愛情を膨らませていくのだった。そしてある日、また別の死体が彼らによって生み出されてしまうことになってしまう。。若者たちの欲望と焦燥感を描いた岡崎京子の同名漫画を原作に、「ナラタージュ」の行定勲監督が実写映画化した作品。

世に言う青春時代(気持ちが若ければ、いつでも青春という青春は別にして笑)とは、どんなことを想像するでしょうか。 クラスの中で勉強に励んだ日々、仲間たちを時間を忘れるまで語り合った時間、部活動やバイトに熱心に取り組んだあの瞬間、初めて恋をした人を想い続けた悶々とした日常、、人によって、様々な青春を送られたことだと思いますが、ことこうした青春映画となると、すごくキラキラとした日々を懐かしんだり、今まさに青春を迎えている人にはいろんなことに共感したりという作品が多いように思います。でも、青春って、そんなにキラキラしたものでしょうか? 自分の中高時代を振り返っても、なかなか成績が伸びずに苦しんだりとか、お金がなくて友達と遊びに行けなかったりとか、性の問題に悩んだりとか、親や兄弟との確執に苦しんだりとか、、こと青春映画というのは、こうした若い時の負の一面を覆い隠して、いいことばかりしか描いてないように思えてなりません。周りを見ても、ヤンキーぽっくツッパっていた奴もいるし、イジメに苦しんでいる子もいたし、それこそ悪い大人に絡まれている奴もいた。そうした彼ら彼女らにも青春があり、その青春もちゃんと描かなければ真の意味での青春作品ってないように思うのです。本作は、そうした痛い青春を描いた秀作だと思います。

本作の舞台になるのが、1990年代。まさに自分の青春(といっても、少し上かなとも思いますが)を描いた作品で、まだ携帯も、SNSもない時代に、家族や友人などの周りの他人や、少し進んだ大人の世界へとも踏み出せない苦しく、すごい成長痛(心の意味でね)に苦しんでいる若者たちが描かれるのです。今はSNS全盛で、(負の一面もあるものの)引っ込み思案の子であっても、同じプラットフォーム上で自己アピールしやすい時代じゃないかなと思うのですが、当時はまだ情報が少ない時代で、周りはやたらモノには満たされていたけど、他人との関係で心が空虚になりやすいときだったのかなと今振り返れば思います。そこで怖いのは、本作のルミやカンナの存在。彼女らは見かけでは他人より自分のほうが分かっていると感じさせながら、実は何も見えていなくて、とことんアクセルを踏まないと自分を保つことができない危うい存在。それが作品後半で爆発してしまう様は、観ていてすごく強烈に印象に残ります。

それと対称的に、主人公であるハルナであったり、山田やこずえは作品の序盤では結構暴走キャラに見えるのですが、外見上に傷つく自分を恐れていないことが、ルミやカンナと違って、強い内面を持っていることになるのです。特に、同性愛者でもある山田が発する言葉がすごく心に残る。初恋の同級生の存在を、手を出せないすごく高貴なモノと捉えるところなどは、まさに僧侶の域ですなと観ていて思いました(笑)。内容的には少し残酷な作品でもありますが、こうした青春をくぐり抜けた彼らこそ強い大人になるんだなとも感じる作品でした。

次回レビュー予定は、「あさがくるまえに」です。

コメントを残す