『あなたの旅立ち、綴ります』:ビジネスで成功を収めた女性が依頼する生きている間の訃報記事作成。役者の演技には上手さを感じるが、お話が結構ボヤケたイメージしか残さない。。

あなたの旅立ち、綴ります

「あなたの旅立ち、綴ります」を観ました。

評価:★☆

ビジネスで成功を収めた老婦人ハリエットは、引退した今の生活に何の不満もなく生きてきた。いや、むしろ何もなさすぎて、雇っている家政婦や庭師の仕事ぶりを細かくチェックしては、彼らの仕事を奪ってしまうくらいに何もない生活だった。そんなある日、新聞を眺めていたら、ある訃報記事に目を留める。そこに書かれている文章を読むうちに、生きているうちに自らの訃報記事を書かせるという突拍子もないアイディアを思いつく。早速、地元新聞の訃報記事専門記者アンに書かせることに。最初は嫌々ながらも、上司の命令で仕方なく記事のために取材を始めるアンだったが、ビジネスでも独善的だったハリエットを良く言う者はおらず、記事作成は難航を極めることになる。そのことを知ったハリエットは、最高の訃報記事になるように自分を変えると決心するのだが。。S・マクレーンとA・セイフライドがプロデュースも務めた人間ドラマ。監督は「プロフェシー」のマーク・ペリントン。

新聞の訃報記事というのは読む人がいるのだろうか、、と観ながら思いましたが、自分の場合でいうなら、毎日読んでいる経済紙の経営者の訃報欄を眺めるくらい。まぁ、当然のことながら、そこに書かれている方というのは未だに大先輩で知らない人が多いので、訃報というと、アカデミー賞授賞式のときなどに必ず流れる、その年に亡くなった名優・名スタッフを悼む映像で、ああ、この人もいなくなったのか、、ということを知ることが最も身近な訃報との接し方でしょうか。誰しも自らの死に様というのを少しは考えたことがあるのかもしれないですが、成人式とか結婚式はまだしも、自分の葬式というのは自分が主役でも、実質的に自分がいないわけ(葬式は遺された人のためのもの)なので、遺された人が思うように、(下手すれば何もやらなくてもいいし)勝手にやってくれたらいいなと自分の場合は思ってしまいます。

そんな立場の自分なのでかもしれないですが、本作の主役ハリエットが自分のいいように訃報記事を書いてもらいたいという動機自体に、まず共感できなかったという斜め視線から入ってしまったのがいけなかったかもしれません(笑)。いい訃報記事ができないことに焦ったハリエットが自らを変えるという行動がハートフル・コメディのようになっていくところに、本作の面白さがあると思うのですが、どうも全体的にノレませんでした。。御年83歳(2017年時点)のシャーリー・マクレーンは、「トレヴィの泉で二度目の恋を」で魅せたように愛くるしい演技の中に秘められた可愛さというのが本作でも発揮されているし、記者アンを演じるアマンダ・セイフライドの抑えた演技も、ハリエットとアンの年齢を越えた友情というのはしっかり見える、いいコンビネーションだったとは思います。ただ、ハリエットの独善ぶりは相当なもので、彼女がそうせざるを得なかったという終盤の転換部分もしっかり決まっていないので、やっぱり自分勝手な人という印象のまま終わっていっているように見えて仕方ないのです。9歳のブレンダというキャラクターも、子役としては印象的な演技なのに、物語では十分な役割を果たせず、通りすがっている印象も拭えません。唯一よかったのは、ハリエットがラジオのDJで再び人生に活気を魅せたところくらいでしょうかね。期待した作品なだけに、少し残念な印象を残す作品でした。

次回レビュー予定は、「少女ファニーと運命の旅」です。

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