『レオン』:地味なナイスバティOLと女好き社長が入れ替わる爆笑コメディ。主演2人を始めとして、各キャラと役者の配置が絶妙な作品!

レオン

「レオン」を観ました。

評価:★★★★

ナイスバディの持ち主だが地味な性格の派遣OL・小鳥遊玲音は、創業30年の老舗食品会社で経理として働いていた。彼女が密かに想いを寄せているのが、会社の税理士でスマートな風貌から女子社員の憧れの的となっていた日下。なぜなら、根っからのネガティブ思考で目立たない彼女に、彼のほうからなぜか声をかけてきたのだからだ。のぼせ上がった玲音は彼のために手作り弁当まで作るが、そのとき偶然に聞いた会話で、日下にもてあそばれていたことを知る。一方、彼女が務める会社の社長で女好きな朝比奈玲男は、甥で副社長の政夫を含め、誰の意見も聞かない超ワンマン経営。役員全てが、そんな彼の行動に愛想を尽かせていた。そんなある日、玲音と玲男は同じ車の事故に巻き込まれてしまう。翌朝目覚めるとお互いの心と身体が入れ替わっていたのだった。。清智英と大倉かおりによる同名漫画を実写映画化した作品。ダンスグループKARAの元メンバーで、本作が劇場長編映画初主演となる知英と竹中直人が組んだ爆笑コメディ。監督は「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の塚本連平。

大林監督の「転校生」から、最近ではヒットした「君の名は」までにも使われた、いわゆる男女入れ替わりモノ映画。ところがこうした使い古されたネタでも、工夫すればここまで面白くなるのかということを改めて感じさせてくれた作品です。もう、観ている間ずっと爆笑必至の作品でした。なんでしょう、例えれば、肉じゃがという定番のありふれた料理でも、一味加えるだけで洋風になったり、中華風になったりで、同じ素材を使っても違う味の風景が見えてくるのと同じような感じがするのです。まずいいのは、主演2人のキャラクターの良さ。竹中直人に関しては、過去の作品やテレビのバライティでも笑いを誘うような役者としてのキャラ付けが分かっているのですが、そんな彼の持ち味を相手役となる知英が全く殺さないのが素晴らしい。入れ替わりなので、知英についても竹中直人的なキャラ作りが求められるのですが、彼女は逆に自分自身の色を入れ替わりになる竹中直人側にも求めるようなレベルの高さを見せてくれるのです。だから、2人の掛け合いは演技としても、笑いのコンビとしての息の合い具合も絶妙によく感じるのです。

それに演出に関しても、そうした2人の演技合戦を殺さない、むしろ助けるような味付けをしているのが素晴らしい。印象的なのは、男女の入れ替わりであるあるなネタ(性器の違いであったり、同性に迫られることになるところだったり)を、実際はこんなイメージになっているというところを映像で見せるところ。これも全てのシーンではなく、ロマンス調になるところは見た目の姿のままで、男女入れ替わりのモチーフで少し描き方が難しいところは、あえてこうしたイメージ図のほうを用いることで、役者の演技を助けるような形にうまく持っていっているのです。ここではやはり竹中直人の味がしっかり発揮されている。彼の喜劇役者としての卓越さは、もう一種の伝統芸能のような技すら感じるのです。

原作が漫画ということもあって、ドラマとしてみると少しコミカル過ぎるような脚本になっており、その部分は好き嫌いが分かれるかなと思います。でも、日下を演じる山下育三郎の針の振り切った演技をはじめとして、政夫を演じるジャングルポケット斉藤や、秘書を演じるミッツ・マングローブまで、それぞれのキャラの個性と、役者の個性が(やはり主演2人と同様に)うまく引き出されているところが、よい作品の味になっています。この頃、笑ってないなと思う人には、素直に鑑賞をオススメできる良質コメディ作品です。

次回レビュー予定は、「あなたの旅立ち、綴ります」です。

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