『グレイテスト・ショーマン』:奇異で個性的な人々を前面に出した興行師の成功劇!社会的に差別を受ける全ての人々の想いが詰まったミュージカルシーンには感涙必死!!

グレイテスト・ショーマン

「グレイテスト・ショーマン」を観ました。

評価:★★★★☆

19世紀半ばのアメリカ。バーナムはある富豪に仕える執事の息子として生まれたが、幼き頃から仕える富豪の娘チャリティに密かに恋心を抱いていた。成長したバーナムは駆け落ち同然で、チャリティと結ばれる。チャリティの親からは勘当された身で、貧しい家計を支えるためバーナムは数多くの職業につくものの中々長続きしなかった。そんなある時、オンリーワンの個性を持つ人々と出会ったバーナムは彼らを使って型破りなショーを成功させ、興行師として華々しいデビューを飾る。しかし、その型破り過ぎるショースタイルに世間には根強い反対も多く、なかなか社会には認めてもらえなかった。そんな中、英国女王に謁見する機会を得たバーナムは、オペラ歌手ジェニーと出会うのだが。。「ラ・ラ・ランド」の音楽チームが楽曲を手掛けたミュージカル映画。19世紀半ばのアメリカ。脚本は、「美女と野獣」の監督を務めたビル・コンドン。監督は、VFX出身のマイケル・グレイシー。

人の長き歴史の中で、常に蔑まされて生きてきた人たちというのが、どの社会でもいました。ユダヤ人やイスラムの人々などの特定の宗教を信仰する人たち、アフリカ系やインディアンなどの特定の人種の人たち、あるいは職場や政治などの場で参加することができなかった女性たち、あるいは被差別部落に住む人たちや、病気や障害を抱え、社会参加がままならない人たち、、今でも世界の何処かで、そうした自分と社会との間の溝に苦しみ、同時にその溝を乗り越え、戦おうとしている人たちもいる。そうした社会から奇異な目で見られた人たちがとる戦略の一つとして、本作のバーナムたちが取るような方法もあると思います。それは”変な奴ら”として集まる目、そのものをエンターテイメントに変えようということ。これは人の根源にある、他者と自分との違いを思わず見てしまうということを、逆手にとった上手い手なのです。しかし、彼ら彼女らの踊りや歌の中には、同時にそうした戦略しか取れない苦しみがソウルであり、ブルースといった形で秘められている。この映画が圧倒的に感動するのは、ミュージカルの1シーン1シーンにそうした長きに渡って苦しんできた人の想いが詰まっているからだと思います。

それにしても、久々にパワフルで感動するミュージカル映画でした。やはり、ミュージカルはパワフルに限ります。昨年(2017年)の「ラ・ラ・ランド」のようにオシャレでまとまっているものや、大ヒットした「レ・ミゼラブル」のような文芸モノも素敵なんですが、僕は「ムーラン・ルージュ」や「ヘアスプレー」などの、思わず踊りだしちゃうようなパワフルミュージカル映画がやはり大好きです。本作が凄いなと思うのは、序盤のバーナムとチャリティの幼き頃の出会いから、最初にバーナムが興業を成功させる中盤までを一気に魅せてしまう脚本の展開力にあります。バーナム一家の背景はちゃんと描きますが、バーナムが集める個性的なメンバーは一人一人いちいち紹介せず、もうミュージカルシーンだけに特化して紹介しきってしまう。これができてしまうのも、展開される歌なり踊りなりが凄く私たちを虜にしてしまうくらいに素晴らしいものに尽きるからです。アカデミー歌曲賞にもノミネートされた「THIS IS ME」の歌詞も曲も素晴らしいこと、この上ない。このシーンだけでホントに泣けます。

ただ、この序盤から細かいところを抜きに一気に描いてきたツケが、中盤以降少し苦しくなっているところが何とも惜しい。バーナムが興業の成功のみを追い求め、本来の意味合いを見失うという設定にはなるのですが、この個性的な面々を集めたことが本来の彼の狙いだったのかというところがあまりちゃんと伝わってこない。なので、メンバーの裏切られたという思いが少し空転しているようにも思うのです。メンバーの一人一人の苦しみみたいのがもう少し見えると、その辺りが共感できるお話になったかなと思います。いや、でもいい作品なので、是非スクリーンでこの迫力を感じて欲しいです。

次回レビュー予定は、「ロスト・イン・パリ」です。

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