『バーバリアンズ セルビアの若きまなざし』:役者も、映像もそれなりに素晴らしいが、何も感じ取れない無機質な作品。。

バーバリアンズ

「バーバリアンズ セルビアの若きまなざし」を観ました。

評価:★

2008年のセルビア独立を背景に、大人になりきれない十代の若き青年たちの心のまなざしを描いた、セルビア出身のイヴァン・イキッチ監督の長編デビュー作。主演のジェリコ・マルコヴィッチやネナド・ペトロヴィッチなど、役者自身がセルビアの地元の若者たち(それも不良少年たち)を使っているという、なんともヒヤヒヤとするというか、妙にリアリティが伴った作品となっています。

ただ、そうした素人たちに役者ばりの演技をさせることには成功しているものの、この映画自身が一体何を訴えたいのかがイマイチ伝わってこない。主役の問題児ルカにしても、漫然と代わりのない毎日から何とか抜けだそうと、、、したいのかしたくないのか、それすらもよく分からない。ゆとり世代というか、若きパワーをぶつける対象もなく、ただ、過ぎゆく毎日に溺れていくだけの若者にしか映らないのです。ルカが親から傷を受けないパワハラを受けていることにもあるかもしれないですが、陰鬱な中で、毎日をぬけ出すパワーが発散する場が、サッカーの応援しかないという悲しさ。若きパワーははけ口もなく、ただチンピラたちのどうでもいい意地の張り合いにしか費やされない現実が淡々と描かれるだけなのです。

それをぬけ出すようなキッカケが与えられるのが、若きして家を出て、今も生きている父親の存在。離れ離れになった父の存在が物語を大きく動かすのかと思いきや、意外にそうでもない。。そうした起こるようで何も起こらない物語の背景を、セルビアの独立運動がざざーっと台風のように過ぎ去っていく。そうした時代の大きなうねりにもまれながらも、やはり毎日はただ同じように過ぎゆく。。結局、変わりたいと思わないければ、人生は何も変わらない、、、これが本作の教訓でしょうか。。激しく移り変わっていくシークエンスとは裏腹に、物語の底辺は何も変わらない本作をどう感じればいいのか、、なかなか僕には捉え方が難しい作品でした。役者も、各シーンもそれなりに素晴らしいのに、無機質というか、何の味もしない作品のように感じてしまいました。

次回レビュー予定は、「クーパー家の晩餐会」です。

コメントを残す