『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナの愛した命』:ユダヤ人を救うために自ら全てを捧げた夫婦の物語。じっくり組み上げた前半部に対し、性急になった後半部で作品のスケール感が小さくなった。。

ユダヤ人を救った動物園

「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」を観ました。

評価:★★

1939年、第二次世界大戦勃発後のポーランド。ナチスの侵攻によって、ヤンとアントニーナの夫妻は経営していた動物園が立ち行かなくなってしまう。数少ない動物たちを救いながら、ゲットーに押し込められるユダヤ人たちを匿うことを画策したアントニーナは、残った動物園の施設を使った養豚場をつくることをナチスに提案する。それは同時に、飼料にゲットーからの生ゴミを使用することを目的化させ、ゲットーからユダヤ人を救出し、自らの動物園を逃走のための中継基地に使う計画だった。だがそれは、自らをも危険に晒す行為だった。。第二次世界大戦中、300人ものユダヤ人をナチスの迫害から救ったポーランドの動物園経営者夫妻の実話を映画化。メガホンを取ったのは「スタンドアップ」のニキ・カーロ。

「否定と肯定」と続き、第二次世界大戦下のユダヤ人迫害を扱った映画を連続鑑賞となりました。「否定〜」が現代劇になっていたのに対し、本作は「シンドラーのリスト」と同じような史実を取りあげた劇映画となっています。「シンドラーのリスト」のオスカー・シンドラーと、本作の主人公アントニーナ夫妻にも共通するのが、信教に限定されず、人を救うということに一心になりながらも、そうするにはナチに対して自らを偽ったような形で生活をしなければならないという苦しみの部分。シンドラーにはユダヤ人の秘書が心の支えとなっていたと同様に、アントニーナにもヤンという夫の存在がいたからこそ、この苦しみを共に乗り越えれたということがよく分かるのです。印象的なのは、ナチスの本部に養豚場にすることを提案しに赴くシーン。人は正しいことと分かっていても、自ら苦しくなるような状況には追い込みたがらないものなのですが、この場面で夫婦は同志として支え合うことを決意するのです。この決意によって、多くの人が救われることになる。人って、しなやかに強くなるときはすごく美しいものだと改めて思いました。

だが、本作はそうした前半部から、戦争末期になる後半部になると急にスケール感が小さくなるのです。本来なら、ユダヤ人を救っていくところや、ナチに追い込まれていくところにヒヤヒヤするところに作品の味となるところなのですが、アントニーナの息子が両親の素晴らしさに比べ、ちょっとおバカ過ぎる行動に走ったり、300人を救ったという割に映画の中で救う人物たちが少数に見えたり、ゆっくりした前半部に対して、後半はやや走り気味にいろんなストーリーを押し込みすぎになっていたりと、、なんかいろいろ急いて描いているせいで、スケール感がやっぱり小さく感じざるを得ないのです。それに前半部では可愛かったアントニーナの息子が、1年少々の作品中の時間経過でいきなり違う子役(それも縦にも横にもいきなり大きくなるし、ちょっと不細工になるし、、)に変わって、しかも彼の素っ頓狂な行動でアントニーナが追い込まれてしまうという、バカ息子的な行動もちょっといただけなかったかなと思いました。。

前半部の組み立てがいいだけに残念な作品です。動物園という割に、後半は動物たちはほとんど出てこないですし(まぁ、戦中シーンだから仕方ないのですが、、)ね。

次回レビュー予定は、「茅ヶ崎物語 MY LITTLE HOMETOWN」です。

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